基準値超える水銀摂取 金鉱山のイ人女性労働者 調査対象67人の97%  国際環境団体 胎児の発育に影響

 水銀汚染の可能性が指摘される25カ国の金鉱山労働者や工業地帯住民の女性約千人を対象にした調査で、インドネシアの調査対象者67人の97%、65人が健康被害の原因となり得る量の水銀を日常的に摂取していることが分かった。有機水銀を体内に蓄積した魚介類摂取や金精製作業時の水銀吸引が原因とみられ、調査を実施した国際環境団体は「低濃度の汚染でも胎児の発育に影響を及ぼす。(汚染防止のため)各国政府による水銀輸出入の規制も必要だ」と警鐘を鳴らしている。

 調査は、100を超える国・地域で活動する国際非政府組織(NGO)ネットワークの「国際POPs(残留性有機汚染物質)廃絶ネットワーク」(IPEN、本部・米カリフォルニア)と非営利研究機関の「生物多様性研究所」(BRI、本部・米メーン州)が2015〜16年に実施した。
 調査対象となった25カ国の37地域は、海水が汚染されている工業地帯周辺▽金鉱山やめっき職人など水銀を使う労働者の多い地域▽魚をよく食べる地域――など。妊娠が可能な18〜44歳の女性1044人の毛髪を採取、水銀の含有濃度を調べた。
 インドネシアでは零細小規模金採掘(ASGM)従事者を対象に、西ヌサトゥンガラ州西ロンボク県スコトン郡と西ジャワ州ボゴール県チサルアにあるポンコル山で、計67人の調査が実施された。結果は、65人の毛髪から米国環境保護庁の基準値1ppmを超える水銀が検出され、健康被害をもたらす恐れのある量の水銀を摂取、吸引し続けていることが分かった。
 スコトン郡の最高値は90.84ppm、ポンコル山は6.18ppmだった。
 ASGMの金精製は、金と水銀の合金を熱して水銀を蒸発させ、金を残す方法が一般的。スコトン郡では乳児や子ども、妊娠中の女性がいる住宅の台所でも金を抽出しているという。
 水銀汚染はジャカルタ湾でも指摘されており、イ国内で活動する環境NGO「バリフォクス」のユユン・イスマワティさんは「石炭火力発電所やセメント関係の工場が海に水銀を垂れ流し、水銀を蓄積した魚を増やしている。ジャカルタ湾の魚も汚染されている」と指摘、発電所建設などに伴い水銀の汚染地域が拡大する恐れがあると警鐘を鳴らしている。

■太平洋諸島、タイも
 調査対象の1044人全体では、毛髪の水銀含有濃度が1ppmを超えた女性の割合は36%。胎児が影響を受けるとされる0.58ppm以上は55%だった。
 25カ国・37地域全体で、1ppmを超えた女性の割合が多かった上位10カ国・地域は、キリバス(調査対象数30人、100%)、インドネシア同2地域(同67人、97%)、マーシャル諸島(同30人、97%)、トンガ(同30人、97%)、クック諸島(同60人、95%)、ミャンマー(同30人、93%)、ツバル(同30人、93%)、ソロモン諸島(同29人、90%)、タイのプラーチーンブリー県タートゥム地区(同34人、79%)、タイのマープタープット工業団地(同34人、68%)だった。ロシアとハンガリーは調査対象者全員が基準値以下だった。
 インドネシアと同様、ASGMに従事する女性が調査対象となったミャンマーでは93%が1ppmを超えた。魚を多く食べるクック諸島やキリバス、マーシャル諸島などでも90%が1ppmを超え、キリバスでは全員が超えた。
 タイなど工業化が進む地域では汚染された水路や海で採った魚を食べることで、水銀濃度が高まったもよう。IPENは調査報告書で「汚染防止で子どもや女性を守り、女性の体内に蓄積された水銀量と海産物の安全性について調査を継続する必要がある」と訴えている。(毛利春香)

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