「首に切り傷あった」 バリ邦人夫妻遺体 事件の可能性を捜査

 バリ島南部バドゥン県ジンバランの高級住宅地プリ・ガディンの住居で4日、松葉紀男、博子さん夫妻の遺体が見つかった事件で、異変に気付き家の中に入った住民や自警団員は5日、「首に切り傷があった」「ベッドの上に遺体があり、その周りに積み重ねられた木材が燃やされていた」と話した。警察は同日朝、検視のために遺体を病院に移し、事件の可能性もあるとして捜査を進めている。

 遺体の第1発見者は、結婚を機に2008年からバリで暮らす、日本の豆腐屋を営む菜切真由美さん(45)の夫、ルクマン・ファイクさん(39)と、共通の友人のアブドゥル・サラムさん(48)。
 ルクマンさんが松葉さん宅の異変に気付いたのは4日午前11時ごろ。習字教室を開いている書道家の松葉夫妻に頼んでいた豆腐店の看板を取りにアブドゥルさんと一緒に家を訪ねた時だった。
 引き戸式の門越しに名前を呼んでも返事がなく、電話をしてもつながらず、寝室がある2階の窓が真っ黒になっているのに気付いた。火の手は上がっていなかった。
 「家の中からかすかな咳や声が聞こえた。生きているなら助けなければ」。ルクマンさんは菜切さんに電話し、駆けつけた菜切さんがインドネシア語をあまり話せない松葉夫妻に日本語で「お父さん!」などと繰り返し叫んだが応答がない。松葉夫妻宅の左斜め向かいに住む河原田篤子さん(58)は、この叫び声を聞いて夫と共に家を出た。
 門の上から敷地内を除くと、異様な光景が広がっていた。菜切さんは「車の扉と給油口カバーが開き、地面には財布が転がっていた」と不審な点を指摘する。
 騒ぎを聞いて駆け付けた地元の自警団「ラスカル・バリ」の団員らと共に門をこじ開けた。家は施錠されていたため、ルクマンさんとアブドゥルさんが脚立を伸ばして車庫の上に登り、自警団員と共に2階のベランダの窓をこじ開けて中に入った。
 壁や天井は真っ黒に焦げており、家の中は真っ暗で何も見えない。寝室に入ると、ベッドの上に横たわっている松葉夫妻の遺体を発見した。回りには木材が積み重ねられ、燃やされていた。自警団員によると首には切り傷のような痕があったという。
 警察は4日に続き、5日午前8時半から現場検証を行った。検証のため現場に残されていた松葉夫妻の遺体は午前11時ごろ、デンパサール市内のサンラ病院に検視のために運ばれた。家にいた犬も警察のもとに運ばれた。
 警察は、現場には1階の浴室から2階の寝室まで遺体を引きずったような血痕があり、浴室やベッドにも血痕が残っていたと説明。何らかの事件に巻き込まれた疑いがあるとの見方を強めている。
 警察は同日までに菜切さん夫妻やアブドゥルさん、松葉夫妻の家事手伝い、親しい知人など6人から事情聴取。現地報道では松葉夫妻に養子がいるとしているが、河原田さんは「親しくしている人がそう呼ばれることがある」と話した。

■閑静な高級住宅地
 プリ・ガディンは2000年ごろはエリートが住む高級住宅地だったが、他地域に新興住宅地が広がったため、今では閑静な住宅街となっている。
 2、3年前から日本人居住者も増え始め、欧州や中国人も見かけるようになった。松葉夫妻は13年、長年住み慣れた西ジャワ州バンドン市からバリ島へ移住し、1年ほど前からこの借家に住み始めた。
 河原田さんは「あまり面識はないが、いつも犬を散歩させているので住民は松葉夫妻をよく知っている。火事だと報道されたが、発見時はすでに火の手は弱く、前日の3日夜も静かだった。誰も気づかなかった」と話した。(中島昭浩)

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