【アジアを駆けた半世紀 草野靖夫氏を偲ぶ(8)】 取材を超えた関係 山崎裕人

 私と草野さんの出会いはちょうど二十年前。日本の国連PKO活動への初参加で、日本文民警察隊長としてカンボジアへ派遣されたときです。草野さんは毎日新聞プノンペン支局長。この連載の第一回に登場した萩尾信也さんとともに、混沌とするカンボジア情勢、選挙実施に向けたUNTAC(国際連合カンボジア暫定統治機構)の取材などに奔走していました。
 支局はホテルの地下にあり、すぐ隣が日本政府の連絡事務所。私は連絡事務所に赴くのが日課で、草野さんとはすぐに親しくなりました。食事に行ったことも数え切れません。社会部時代の警察取材の話も何度もうかがいました。一九九三年五月四日、日本文民警察官殉職事件が起きてしまいましたが、この痛恨の極みに際しても、温かい励ましと慰めの言葉を頂きました。
 九四年から毎年、カンボジアPKOに参加した人たちを中心に会合を持っています。草野さんも最初の何回かは出席いただきました。萩尾さんなどから消息は伝わっていましたが、再会したのは、二〇〇〇年六月、インドネシア国家警察改革のお手伝いのための調査団としてジャカルタを訪問したときでした。
 〇一年二月、そして〇九年八月にジャカルタに赴任してからは、旧交を温めつつ、インドネシア事情について意見交換もしました。仕事に限らず、一緒にゴルフにも興じ、奥様とも仲良くお付き合いさせていただき、文字通り公私ともにお世話になりました。
 カンボジアを起点に始まった草野さんとの交流は、ジャカルタで終点となりました。「取材する側」と「される側」という関係を超えて、人生の先輩と後輩として心温まる関係を築くことができました。草野さんのお人柄ゆえです。
 あのキラキラ輝く「聞かん坊」のような眼差し、いつも柔和な笑顔、止まらなくなる早口、すべてが記憶に宿っています。草野さんほど「さようなら」の似合わぬ方はいないでしょう。ひょっこりと草野さんが愛して止まぬ東南アジアのどこかに姿を現すような気がしてなりません。(警察庁長官官房付・警視監、インドネシア国家警察長官政策アドバイザー)――1992年以来、公私ともに親交を深める。

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