露天商が戻ってきた? 州警備隊が見回り強化 中央ジャカルタ・タナアバン
伝統の卸売り市場がある中央ジャカルタ・タナアバン周辺に、露天商が戻ってきたとの報道が地元メディアで出回っている。これを受けてジャカルタ特別州次期知事のアニス・バスウェダン氏は、規律を守らせるようジャロット知事代行に進言。問題となっている国鉄(KAI)タナアバン駅前のジャティバル通りでは、同州警備隊などが約300人態勢で見回りを強化した。
特別州政府は2016年5月、州内48カ所の歩道拡幅工事に着手。タナアバンでは12月までに歩道がほぼ完成し、道幅は約2メートルから2倍に広がった。拡幅に伴い、歩道上での商売と路上駐車は禁止され、州警備隊が違反者を取り締まってきた。
「露天商復活報道」のきっかけは、アホック知事の休職と宗教冒とく罪での実刑判決(禁錮2年)。地元メディアのレプブリカのウェブ版は8日、「アホック氏が知事選のために休職したので戻ってきた。州警備隊の見回りもどこかの店に入ってしまえば怖くない」などとする露天商のインタビューを掲載。
アホック氏の抑止力低下をにおわせる内容で、その後、複数の地元メディアも「歩道で露天商が増え通行を妨げている」などと報じた。
これを受け、アニス氏は12日、地元メディアに「歩道で商売してるのであれば、すぐ対処しなければならない。知事としての任期は10月から始まるので、現体制が善処してくれると思う。ジャロット氏の職務遂行を尊重したい」と語った。
当のジャロット知事代行は同日中に対策会議を招集。14日からは、州警備隊や警察、州運輸局職員などがジャティバル通りやブロックA〜Gまで区分けされたタナアバン伝統市場周辺で違反者の見回りを強化した。午前7時〜午後11時の間で2〜3シフトに分かれて200〜300人態勢で警戒に当たっている。
タナアバン周辺で州警備隊員を17年務めるヘリヤントさん(47)は15日、じゃかるた新聞の取材に対し、「例年と同様、ラマダン(断食月)前の書き入れ時に合わせ、露天商が集まっているだけ」と指摘。アホック氏の抑止力低下と露天商復活を結びつける地元報道とは違う見方を示した。
見回りでは、露天商の商売道具を没収し、東ジャカルタ区チャクンにある州警備隊の倉庫で保管する。摘発された露天商は中央ジャカルタ地裁に出向き、違反金を支払うと荷物を返却してもらえる。違反金の額は50万ルピアまでという。ヘリヤントさんは「買い物客が多いので、露天商は10回注意されても、市場に戻ってくる」とも話した。
アホック氏の抑止力低下をめぐっては、北・西ジャカルタにまたがるカリジョド公園で4月、露天商や違法駐車が横行していると報じられた。特別州政府はこれを受け、警備担当者約70人を配置し、見回りなどを強化した。(中島昭浩、写真も)