アチェ党参加で打開へ 利権絡み元GAM対立 首長選で政情悪化

 二〇〇四年末のスマトラ沖地震・津波以降、二回目の統一首長選が四月に迫るアチェ。昨年末から選挙に絡む暴力事件が多発している。利権が複雑に絡み合い、ともにGAMを母体とするイルワンディ・ユスフ知事派と反知事派の権力争いの激化が背景にあるとみられる。しかし、両陣営の首長選候補が出そろい、民主的なプロセスを経て決着を付ける素地が固まりつつある模様だ。

 イルワンディ知事は、二〇〇四年末のスマトラ沖地震津波後、インドネシア政府側との交渉仲介役を務めた。〇五年、三十年間にわたる分離独立運動を終結、和平合意締結を実現した際の中心人物の一人。
 しかし、スウェーデンに亡命していたGAM最高幹部らとはあまり近くないとされ、知事任期中に対立が表面化。GAMを母体に結党し、前回選挙で圧勝した地方政党アチェ党は、イルワンディ知事の続投を拒否。同知事が党基盤を持たない独立候補として出馬を決めると、暴力事件が続発した。同知事支持者らへの虐待も発生し、治安悪化を理由に首長選を失敗させようと画策する対立勢力の仕業との見方も出た。
 政府代表として和平交渉を行ったユスフ・カラ前副大統領らは事態を重視し、アチェ党の候補を首長選に取り込むことで状況を打開すべきだとユドヨノ大統領に進言。アチェ選管が候補者受付を再開し、内務省は昨年十月から再三延期された日程を四月に決定した。
 これを受け、アチェ党は、スウェーデンに長年滞在していたGAMの「元外相」ザイニ・アブドゥラ氏を知事候補に、GAM司令官としてゲリラ戦を指揮してきたムザキル・マナフ同党党首を副知事候補に擁立。政府はアチェ党候補が参加することで民主的な選挙を実施し、武力衝突を回避する方針を打ち出した。

■ キャンペーン開始
 両陣営のキャンペーン合戦はすでに始まっている。
 アチェ党は十二日、州都バンダアチェ市で集会を開き、統一選の正副市長・県知事候補のペア十七人を発表した。アチェの二十三県市から約五万人が同市内をパレードし、同党の動員力を見せつけた。
 集会にはかつてGAMと敵対した陸軍特殊部隊(コパスス)の元司令官ユスフ・スナルコ氏ら三人の退役軍人が出席。アチェ党は擁立の方向で調整している。陸軍アチェ軍管区の報道官は、三人の式典への出席は個人の意志によるもので、アチェ党と国軍が協力関係にあるわけではないとした。
 一方、十三日、イルワンディ知事は地方政党を創設する方針を表明。地元メディアに対し、「アチェ党は人々の求めることに応えられていない。新政党は元GAMだけでなく、アチェ市民に門戸を開きたい」と語り、市民の支持を集めているとの自信をのぞかせた。知事自身は党首ではなく創設者として監督する立場に立つという。時期は明らかにしなかった。
 同知事の出馬をめぐっては、無所属の現職知事が再出馬することを禁止するアチェ自治法の条項が障害となっていた。だが、昨年、憲法裁判所が禁止条項を無効化する裁定を下し、出馬が認められた経緯がある。
 政府も選挙による民主的なプロセスを踏むことを促す。ユドヨノ大統領は十四日の公開記者質問会で「アチェの選挙はすべての政党に対して開かれるべきだ。選挙がうまくいくことを望んでいる」と話した。大統領は国軍・警察に同州内の治安維持を指示。同州では現在、警察機動隊七百八十人、国軍兵士一万四千人が治安維持にあたる。

政治 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly