きょう決選投票 アホック氏、アニス氏接戦か ジャカルタ知事選
ジャカルタ特別州知事選の決選投票が19日に行われる。世論調査では、ムスリムの取り込みを図るアニス・バスウェダン前教育文化相(47)がわずかにリードし、キリスト教徒の現職アホック知事(50)が猛追、接戦を繰り広げている。投票は午後1時に締め切られ、即日開票される。大勢は同日夕に判明する見通し。
立候補の締め切り直前に、グリンドラ党らが急きょ擁立を決めたアニス氏だったが、実業家のサンディアガ・ウノ氏(47)と組んで「各郡に起業支援センター」「頭金なし住宅ローン」など明快な公約を打ち出し、着実に支持を広げた。最大与党・闘争民主党(PDIP)や市民団体の支持を得て、当初は敵なしと思われていたアホック氏相手に健闘し、2月の第1回投票で39.95%を得票、決選投票に進出した。
立候補直後のコーラン侮辱発言があだとなり、宗教冒とく罪で起訴されたアホック氏も粘りを見せ、第1回投票では得票率42.99%で首位に躍り出た。昨年12月に始まった裁判は論告求刑を延期し、アホック氏は被告人のまま決選投票を迎える。
最新の各種世論調査では大方、アニス氏がリードしている。インドネシア調査サークル(LSI)が13日に発表した調査結果では、アニス組の支持率が最高の51.4%で、アホック組に8.7ポイントの差を付けた。「被告の知事は望ましくない」との声もある一方、前回投票以降の各調査ではアホック氏の支持が微増傾向にある。チャルタ・ポリティカが15日に発表した調査結果では、アホック組が47.3%でアニス組(44.8%)を上回った。「未定」も7.9%あり、浮動票の行方がカギとなる。
約1カ月半に及ぶ選挙戦で、両陣営は敗退したアグス・ハリムルティ・ユドヨノ氏(38)の支持層の取り込みを図った。アホック陣営は、アグス氏を擁立したイスラム政党の民族覚醒党(PKB)や開発統一党(PPP)に接近。アニス氏は、町内会(RW)へ補助金を給付するというアグス氏の目玉公約を継承した。
現職のコーラン侮辱発言が引き金となり、今回の選挙戦は宗教色の強いものとなった。昨年10月以降、イスラム団体によるアホック氏への抗議集会が相次いだ。3月に入っても、1万人規模の集会が行われたり、アホック氏支持者の葬儀礼拝をモスクが拒否したりとジャカルタでは騒動が続いた。
候補者や周辺の人物を攻撃し合う「告発合戦」も起き、インターネット上では誹謗(ひぼう)中傷が目立った。傍ら、「宗教問題にはうんざり」「平和な選挙を」などと呼びかける市民運動も起きた。
アホック氏は来月に判決公判を迎える予定で、投票結果と合わせて行方が注目される。
緊張が増す中、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は17日、関係閣僚や警察、イスラム指導者と会談し平和な選挙を呼びかけた。19日、首都では約6万5千人の治安要員を配備し、厳戒態勢のもと投票が行われる。 (木村綾)