シラサギ集まる神秘の村 バリ島ウブドのプトゥル村
バリ島に、毎日夕方になるとシラサギの群れがやってくる村がある。木々の枝で羽を休め、朝になると飛んで行き、暗くなる頃に舞い戻る。バリ島でなぜ、この村にだけシラサギが集まるのかは分からないが、村人らは「神の使い」とあがめている。
バリ島内陸部ウブド郊外のプトゥル村。スコールがやみ、辺りが薄暗くなってきた午後5時ごろ、シラサギの大群が次々と飛んできた。
「白い大きな実が木になっているようだろう」。男性の観光ガイド、アプリアンタさん(35)が説明した。ひなの鳴き声も方々から聞こえる。
同村にシラサギが飛来し始めたのは約50年前。当時、都市や町から遠い同村住民の暮らしは貧しく「ヒンドゥー教の神々への奉納が足りないのが原因」と考えた村民らは大々的な儀式を実施。儀式最終日の1965年11月7日、どこからかシラサギの群れが現れ、木々に巣を作り始めたという。
えさの小魚を求めて海や湖へ、カエルや昆虫を求めて田んぼへと飛んで行き、夕方になると巣に戻ってくる。
樹木や田んぼがある村はバリ島にいくつもある。なぜプトゥル村にだけ飛んでくるのか。「村民はシラサギを『神の使い』と考え、絶対に殺したり傷つけたりしない。安心し、すみかとするのでは」と地元の運転手アルナワさん(35)。
シラサギの群れを見ようと「神秘の村」に世界中から観光客がやって来るようになった。村に観光収入をもたらし、農業のほか工芸品制作で副収入を得ている住民も多い。「村を豊かにしたシラサギはやはり『神の使い』だ」。アプリアンタさんも話した。(共同・清水健太郎、写真も)