ハラル認証を偽造 憲法裁判事 贈賄業者 輸入肉に使用か
憲法裁判所判事への贈賄容疑で逮捕された肉の大手輸入業者が、ハラル認証マークを偽造していた疑いが浮上した。汚職撲滅委員会(KPK)は業者から28種のスタンプを押収し、農業省や商業省の関与も含め実態解明を急ぐ。
KPKによると、バスキ・ハリマン容疑者から押収したスタンプは、オーストラリアやカナダ、中国のハラル認証機関の認証マーク、インドネシアの農業省家畜衛生総局や商業省といった輸出入許認可関連のマーク。KPKのフェブリ・ディアンシャ報道官は「既に使用されていた場合、該当する省庁が関知していたことになる」と述べ、関係省庁も捜査対象に含める方針を示した。
アムラン・スライマン農業相は「KPKの捜査を支援する」と協力姿勢を表明。「職員の関与が認められた場合は容赦なく処分する」と語った。
バスキ容疑者は仲介者を通し、憲法裁判事のパトリアリス・アクバル容疑者(58)へ賄賂を渡した疑いが持たれている。国内の畜産業振興を妨げているとして、畜産業者や市民団体が請求した家畜衛生法の違憲審査で、同法違憲の判決が出た場合、肉の輸入事業に障害が出ると判断し、合憲判決を出すよう判事に便宜供与を求めたとみられる。
バスキ容疑者は計約20社に上る肉の輸入会社を運営する。北ジャカルタ・スンタルに中核企業4社の拠点を構え、西ジャカルタ・コサンビ、西ジャワ州ボゴール県チルンシなど首都圏各地に輸入牛の保管庫を所有。2003〜08年、輸入肉業者協会の副会長を務めたことがある。
地元メディアによると、同容疑者は04年ごろから、米国などからの牛肉輸入許可を独占。農業省幹部らと太いパイプを持つとされる。11年に発覚した牛肉輸入枠の配分に絡む贈収賄事件では、参考人として取り調べを受けたことがある。同事件では、当時のススウォノ農業相が所属していたイスラム政党・福祉正義党(PKS)のルトフィ・ハサン・イスハク党首が輸入業者から賄賂を受領したことが判明し、収賄罪で禁錮18年の判決を受けている。
■手続きが不明瞭
インドネシアのハラル認証や輸出入の許認可手続きについて、日本のハラル認証機関の一つ、特定非営利活動(NPO)法人日本ハラール協会のレモン史視理事長は、じゃかるた新聞の取材に「不明瞭で、淡々と進まない」と話す。
インドネシアにハラル認証を取得した商品を輸出する場合、イスラム学者会議(MUI)からハラル認証機関として認可された団体が発行した認証でなければならない。同協会はMUIに申請して3年ほどたつが、まだ認可団体として承認されていない。マレーシアとシンガポールからは、日本でのハラル認証機関として既に認可を受けている。
レモン理事長は「インドネシアに輸出したい日本企業は多いが、インドネシア側で業者間との競合などの問題があり、MUIの個人的な理由で手続きが遅々として進まないことが多い」と指摘。「ことしから団体の認可を宗教省が担うと聞いたので、公平な手続きとなってほしい」と語った。(中島昭浩)