暴露本著者を逮捕 国家警察 「大統領を侮辱」容疑 ネット取り締まり強化へ

 国家警察犯罪捜査本局はこのほど、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領を侮辱する内容の暴露本を販売したとして、民族・人種差別撤廃法違反などの疑いで本の著者を逮捕した。ティト・カルナフィアン国家警察長官は4日、本がソーシャルメディア上の発言を元に作られており、信ぴょう性がないと発表。政府はインターネットに拡散する憎悪や悪意、誹謗(ひぼう)中傷、挑発的な発言、人をだます情報に対する取り締まり強化を進めている。
 暴露本のタイトルは「ジョコウィ・アンダーカバー(ジョコウィの秘密)」。この本が大統領の名誉毀損(きそん)にあたると12月24日、法律関係者から国家警察犯罪捜査局に通報があった。同局は30日、著者のバンバン・トリ・ムルヨノ容疑者を中部ジャワ州ブロラで逮捕。民族・人種差別撤廃法と情報・電子商取引(ITE)法、刑法(大統領侮辱)違反の疑いが掛けられている。
 400ページの本の表紙には、1955年に撮影されたとされるインドネシア共産党(PKI)のアイディット書記長が演説する写真をネットから入手して掲載。演壇の側に立つ警護官の後ろ姿が、ジョコウィ大統領の父親だと決め付け、大統領と家族が共産党員だなどとする主張を展開している。
 ティト国家警察長官は「出生証明など一次情報を元にしていないため、本の内容はうそだと確信している」と強調した。ソーシャルメディアやインターネットの発言を集め、容疑者自身が情報を分析し、結びつけたもので、現場取材や第三者との再確認作業をせず、出典の根拠を明示していないと説明した。
 地元メディアによると、バンバン容疑者は中部ジャワ州スマランの元新聞記者との情報もある。
 本は容疑者のフェイスブックアカウント経由で注文を受けて自費出版で販売しており、国家警察は支援者は誰なのか、どこに出回ったかなど引き続き捜査を進める。
■サイバー庁設置へ
 ウィラント政治・法務・治安調整相は3日、「大統領はすでに、国家サイバー庁(BSN)の設置を指示した。1月中に作業を終える」と述べ、サイバー対策の核となる機関の新設を急ぐ姿勢を示した。BSNは国防省や国家情報庁(BIN)、国家警察などのサイバー対策部門を傘下に置き、報道やニュースの真偽を判別する。
 通信情報省は、根拠のない情報や読者をあおるような言葉を載せていないか、報道法に則しているかなど、オンラインメディアの精査を始めている。同様の言葉が使われていないか、無料会話アプリ「ワッツアップ」などの会話内容も監視する。最初に中傷などの発言をした人を追跡する独自の方法で行う。
 ITE法の2016年11月末の初改正では、ポルノやSARA(民族、宗教、人種、階層)、テロ、名誉毀損など、法律に反する情報を拡散した場合、政府がウェブへのアクセスを遮断すると規定。名誉毀損に該当する情報の拡散は親告罪とすることを明記した。
 ジョコウィ大統領は12月29日、ソーシャルメディアの悪用を防ぐため発展的な対策を話し合うため非公開の閣議を開き、侮辱や誹謗中傷、挑発するような発言が社会に与える悪影響への懸念を表明。法整備や規制を強化する考えを示し、大規模なリテラシー教育の実施を求めていた。(中島昭浩)

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