日常取り戻したデモ現場 北ジャカルタ 投石による傷跡も
反アホック氏デモから2日経った6日、警察車両が放火されるなどした現場は平穏な日常を取り戻した。4日深夜、群衆が押し寄せた南ジャカルタ区の国会議事堂前の通りは普段通りの風景に戻ったが、暴徒に店舗が襲われた北ジャカルタ区では、投石による傷跡が残っていた。
警察車両2台に火が放たれた、中央ジャカルタの独立記念塔(モナス)広場の北西部入り口前。6日午後、観光客らでにぎわう普段通りの光景の傍らでは、増員された警官らが警備を続行。放火現場では、塗り直されたアスファルトが黒く光っていた。
警察車両を燃やして気勢を上げたデモ隊は、モナスを出て二手に分かれ、北と南へ進んだ。
南の目的地は南ジャカルタ・スナヤンの国会議事堂。4日午後10時以降、国会議事堂前に集結し、ゲートを挟んで午前2時半ごろまで警官らとにらみ合った。主な要求内容は、アホック知事退陣。記者が現場に到着した5日午前1時半には、約3千人のデモ隊と街宣車2台が道路を埋め、一部は柵を越えて高速道路にはみ出した。
占拠された道路では、段ボールを敷いて眠るデモ参加者が続出。残飯や水で汚れた路上に座り込みながら、南スマトラ州パレンバン出身のアタルさん(37)は「ごみはオレンジの服を着た人(知事が最低賃金を保障した州清掃局の清掃員)が掃除する」と話した。
一方、知事宅のある北ジャカルタ区へ向かったデモ隊は、プンジャリンガンのグドゥン・パンジャン通りのコンビニを襲撃した。6日午後6時時点も、店舗にはシートがかぶせられ、警視庁の警官が警備に当たっていた。
同通りを北上すると中央分離帯に沿ってプルイット・スラタン・ラヤ通りに出る。同通りのルコ(住居付き店舗)で15年間、警備員として働くウジャンさん(66)は「夜間シフトに入って、1時間ほど経った午後9時ごろにデモ隊が来た。投石でルコのガラスが割れた」。
橋を渡って警官隊とにらみ合いになり、当初は警察側の人数が少なく、デモ隊が押し気味。しかし、応援に駆けつけた機動隊により5日午前0時すぎに鎮圧されたという。ウジャンさんは「今はもう普段通り。安心だよ」と、目の前のプルイット貯水池を眺めた。(中島昭浩、写真も)