イスラム指導者と協議 宗教の政治利用けん制 大統領
ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は1日、イスタナ(大統領宮殿)にイスラム団体の代表を招いて約1時間半会談した。コーラン侮辱発言で刑事告発されたアホック・ジャカルタ特別州知事に対し、イスラム強硬派団体のイスラム擁護戦線(FPI)らが4日に予定している抗議デモに向け、国の統一と調和維持のため宗教指導者に協力を求める一方で、宗教を政治利用する勢力をけん制した。
国内のイスラム団体を統括するイスラム学者会議(MUI)のマアルフ・アミン議長、国内最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)のサイド・アキル・シロジ議長、国内第2のムハマディヤのハイダル・ナシル議長らが出席した。
ジョコウィ大統領はイスラム指導者に対し、人々に冷静と平和を呼びかけるよう求めた。マアルフ議長は会談後、記者団に「統一国家を守る準備はできている。この国を分裂させようとする者を、見過ごすことはできない」と述べた。
政治に直接関与することを避けてきたNUとムハマディヤは、反アホックデモに団体名やシンボルマークなどを使用することを禁じている。
ムハマディヤ青年部のダフニル・アンザル代表は地元メディアに対し、「大統領はアホック氏の捜査に介入しないと強調した」と説明。ただ、大統領は同時に経済、政治、社会、文化の基盤を強固にする「精神革命」の必要性を強調し、「特定事業のためだけに条例が作られている地方自治体の現状などを挙げ、ささいなことで法律を持ち出す前に倫理を重視すべきだと話した」と明らかにした。
イスラム指導者との会談には、ウィラント政治・法務・治安調整相やルクマン・ハキム宗教相も同席した。
ジョコウィ大統領は31日、野党グリンドラ党のプラボウォ・スビアント党首の邸宅を訪れ、多様な民族、宗教、人種からなる国家を維持することを確認した。ジャカルタ特別州知事選(2017年2月15日投開票)の選挙運動が28日に開始されたのを受け、ジョコウィ氏の後任であるアホック知事への攻撃材料に宗教を利用する勢力をけん制している。
アホック氏は9月下旬、プラウスリブ県で行われた住民との対話で、「ユダヤ教徒とキリスト教徒を指導者としてはならない」とするコーランの一節に言及し、これを反アホック運動に利用しているイスラム指導者がいることを示唆。
これに対し、MUIがコーランとイスラム指導者への侮辱にあたると判断、強硬派のFPIが展開してきた反アホック運動に加勢した。FPIは4日に大規模デモを動員すると発表し、アホック氏を擁護しているとしてジョコウィ大統領にも批判の矛先を向けている。
国家警察はイスラム団体の刑事告発を受け、宗教冒とく容疑でアホック氏発言の捜査を開始。宗教、言語などの専門家から見解を求める一方、アホック氏を近く事情聴取する方針。(配島克彦)