「この国の人たちと一緒に」 2社とコラボ、モールで販売 スズキタカユキさん ファッション・ウイーク 2年連続参加のデザイナー
「ゆず」や「BUMP OF CHICKEN」など有名アーティストの衣装も手掛ける日本人デザイナー、スズキタカユキさん(41)がインドネシアで地元ブランドと組んで活動を広げている。国内最大級のファッションショー「ジャカルタ・ファッション・ウイーク」に2年連続で出場したスズキさんの、インドネシアでの挑戦を追った。
スズキさんは東京造形大学卒。在学中、アートとして服作りを始めた。舞台衣装を数多く手掛ける傍ら、2002年には自身のブランドを立ち上げ、セレクトショップなどで販売。女優やアーティストからの支持も厚い。
昨年10月、地元ブランド「bateeq(バティーク)」とコラボしてジャカルタ・ファッション・ウイークに初参加した。「売れる、売れないよりも、エネルギーを持っている国で、その国の人たちと一緒にやってみることが面白い。日本でできないことがこの国ではできると思う」。インドネシアに可能性を感じてやって来た。
「ムスリムの人が多いというのも魅力的」と話す。「日本と違う国への興味がすごくある。いろんな文化や気候、国の特色に触れて、その国に合ったものを作りたい」。
服作りにあたり、「こちらの人が大事にしている、伝統を見たいし理解したい」と、この1年で10回以上、インドネシアに足を運んだ。主な訪問先は、バティークの工場がある中部ジャワ州ソロ。バティック工房を訪ねたり、屋台で名物料理「ナシ・リウット」を食べたりする。「人がおおらかで優しいですね」。「住みたいくらい」、この街が気に入った。
素材や縫製などを確認し、納得いく仕上がりになるまで何度でもやり直す。毎回技量を上げてくる工場の人たちの仕事ぶりに「進化が早い」と感心する。
バティークとのコラボで挑む、2回目のファッション・ウイーク。「バティックが根付いているこの国では、柄物に対する価値観が違う」「複雑より、わかりやすいシルエットの方が受け入れられる」――前回のショーを踏まえた試行錯誤を重ね、バティックモチーフや鮮やかな水色を取り入れた36ルックを披露した。
スズキさんはショーの終盤、「サプライズ」を仕掛けた。ランウェイにスズキさんが現れ、モデルが着た白いドレスにはさみを入れ、青いスプレーで染めていく。音楽に合わせ、ドレスをアレンジする即興パフォーマンス。会場は歓声と拍手で湧いた。
昨年のファッション・ウイーク以降、新たに地元ブランド「(X)S・M・L」からもオファーを受け、デザイン提供を始めた。ショッピングモール内の店舗にはスズキさんデザインの服が並んでいる。
順風満帆に見えるインドネシアでの活動だが、スズキさんは「(評価は)五分五分だと思っています」。「インドネシアのことをすごく理解できているとはまだ思っていない。継続的にインドネシアでいろんなことをしていくために、きちんとデータを取りたい」と話す。「一番は、この国の人たちに喜んでもらえるものを作りたいですね」。(木村綾、写真も)