「控訴宣言」に大歓声 コーヒー裁判 激励と期待感が交錯
毒入りコーヒーの判決公判が開かれた27日の午後4時55分すぎ、この日一番の歓声と拍手が中央ジャカルタ地裁傍聴席から沸き起こった。ジェシカ被告に有罪判決が言い渡された後、弁護団長のオットー弁護士が「必ず控訴する」と宣言した瞬間。無罪主張を貫こうとする弁護団への励まし、そして控訴審を舞台にした「ジェシカ劇場」第2幕への期待感が法廷内で交錯した。この後、同被告は肩をさすられながら小さくほほ笑んだが、退廷時にはカメラを向けるメディアに小さくお辞儀し、あふれる涙をぬぐった。
午前8時半すぎに法廷の扉が開くと、一気に人が流れ込んだ。大人2人が何とか通れるほどの入り口に人が殺到。警察官が止めに入るも、我先にと押し合うばかりで団子状態になり、前に進めない。記者は何とか人を押しのけて、法廷に入った。
普段は公判中も自由に出入りできる法廷だが、この日は公判終了まで出入りできなくなった。傍聴席の最前列の席には約20人の女性警官が並び、中央の通路沿いにも警察官が座るなど警備態勢を強化。警視庁によると警察官や警備隊など約480人を派遣し、交代しながら警備に当たった。
廷内の両端と中央通路、背後にはビデオカメラやカメラを手にした記者らがずらりと並んだ。傍聴席は中央の通路を境に、裁判官から見て左側がジェシカ被告、右側が被害者のミルナさんを支援する人で真っ二つに割れた。
当初予定されていた公判開始時刻の午前10時が近づくと、右側の席では約20人がミルナさんの笑顔の写真と「ミルナに正義を」と書かれた白いTシャツを着て、バッジをつけ始めた。法廷外でも支援者がプラカードを手に「ミルナさんに正義を」と訴えた。
しかし、公判が実際に始まったのは予定より3時間遅れの午後1時。午後5時20分すぎの閉廷まで、ジェシカ被告が傍聴席に顔を向ける度に、カメラのシャッター音とフラッシュの光が降り注ぎ続けた。
終始、落ち着きを見せる検察官に対し、弁護団は余裕の表情を見せ傍聴人からの呼びかけに笑顔で手を振るなどしていたが、公判が進むにつれ険しい表情に。 傍聴席からは拍手が何度も沸き起こったり、「ジェシカは毒を入れていない!」とヤジが飛んだりした。
判決言い渡し後、遺族の要望で支援者は傍聴人やメディア関係者に白いバラを配った。すべての公判を傍聴したという主婦のリスナワティさん(64)は「ジェシカが犯人だと信じ、遺族と同じ気持ちでいた。禁錮20年はジェシカにとって十分な罰だと思う」とバラを片手に話した。
仕事の合間に法廷に足を運んでいたフェンディトさん(30)は、ジェシカが毒を入れたかどうかは分からないとしながらも「監視カメラの映像など、検察側の用意した証拠は不十分。無罪になると予想していたから驚いた。裁判を通してとても複雑で奇妙な事件になったと思う」と話した。(毛利春香、江原早紀、写真も)