あす判決言い渡し コーヒー裁判 検察、弁護とも決め手欠く

 中央ジャカルタのカフェで1月、ワヤン・ミルナ・サリヒンさん=当時(27)=のコーヒーに毒を入れ殺害したとして計画殺人罪に問われたジェシカ・クマラ・ウォンソ被告(28)の判決公判が27日午前、中央ジャカルタ地裁で開かれる。検察側が禁錮20年を求刑する一方、弁護側は無罪を主張。約4カ月に及ぶ公判で計46人の証人を喚問したが、決め手になるような証言、証拠は乏しく、裁判所の判断が注目される。

 起訴状などによると、ジェシカ被告は1月6日、モール「グランドインドネシア」内のカフェ「オリビエ」で、猛毒のシアン化ナトリウム入りのアイス・ベトナムコーヒーをミルナさんに飲ませ、殺害したとされる。動機は恋愛感情のもつれだとしている。
 6月中旬に始まった公判の主な争点は▽殺害の動機▽毒物の有無?監視カメラ映像の信ぴょう性▽遺体の解剖結果――の4点。
 動機について検察側は、恋人と別れるようアドバイスしたミルナさんをジェシカ被告が逆恨みし、殺害を計画、実行したと指摘。これに対し弁護側は、2人が留学先のオーストラリアで仲の良い友人だったことから、「(アドバイスは)殺害の動機になり得ない」と主張。同被告自身も「ミルナは大事な友人」と陳述、無実を主張した。
 毒物に関して検察側は、ミルナさんのコーヒーに致死量を超えるシアン化ナトリウム約5グラムが混入していたとの捜査結果を最重視。カフェ店員の「コーヒーの色が黄色に変色し、刺激臭がした」、コーヒーを味見したマネジャーらの「苦みや辛み、熱を感じ、気分が悪くなった」などの証言も得られたことから、シアン化ナトリウムによる毒殺と断定した。
 一方、弁護側はミルナさんの胃から検出されたシアン化ナトリウムが1リットル当たり0.2ミリグラムと非常に微量だったことを根拠に、「食事などから自然に摂取してもおかしくない量。(毒殺の)死因にはなり得ず、(別の理由で)自然死した可能性が高い」と反論した。
 検察側にとって、犯人を特定する「状況証拠」の一つになったのは、カフェ店内に設置された監視カメラの映像記録だった。
 記録や店員らの証言によると、ジェシカ被告はミルナさんが到着する1時間半以上前に一人でカフェに入り、注文と支払いを済ませた。その上で、テーブルに運ばれてきた飲み物と自身の手元を隠すように紙袋を置いた。
 検察側は、この直後に同被告がシアン化ナトリウムをコーヒーに入れたと断定、「監視カメラから映りにくい席に座るなど計画的犯行だった。ミルナさんが倒れた後も眺めているだけで助けようとしなかった」と付け加えた。
 一方、弁護側は「毒を入れた瞬間は映像に記録されていない。目撃証言もない」と反論した上で、映像記録が違法に改ざんされた可能性を指摘した。さらに「シアン化ナトリウム入りのコーヒーを放置すれば有毒ガスが発生したはず。しかし、他の客やコーヒーを味見したマネジャーらは全員無事だった」と無実を主張した。

■国民注視の裁判に
 高級モールのおしゃれなカフェで、富裕層の若い女性2人の間で起こった事件は、動機や殺害方法など「謎」の多さで国民的関心を集めた。
 約4カ月、31回に及んだ公判には、傍聴人やメディア関係者らが連日駆けつけ、立ち見で通路が埋まるほどだった。
 召喚された証人は検察側30人、弁護側16人の計46人。朝から始まった審理が翌日未明まで15時間以上続くこともあり、テレビで長時間生中継されるなど異例の裁判となった。(毛利春香、写真も)

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