現場へなだれ込む記者 札束に視線くぎ付け 運輸省強制捜査
11日午後5時すぎ、中央ジャカルタの運輸省。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領の会見が終わった瞬間、大勢の記者、カメラマンがエレベーターになだれ込んだ。行く先は、贈収賄容疑で警視庁の強制捜査が行われている6階。無情にも定員オーバーのブザーが鳴り、追い出される格好になった本紙記者は、近くにある車両用スロープを一気に駆け上がった。
強制捜査の現場となった運輸省海運総局などが入居するビル「グドゥン・カルヤ」の6階。海運・航空業などの許認可申請手続きの窓口が1カ所にまとめられた「許認可統合サービス室」がある。船員らが申請手続きに訪れる一室には黄色い規制線が張られ、複数の警察官が足早に行き来している。
報道陣に押収品の一部が公開された際、記者らの視線をくぎ付けにしたのは賄賂とみられる札束。
オンラインで受け付けられる船員向け許可証の申請手続きでは、手数料など現金の授受は行われていないはず。賄賂を受けて作成されたとみられる複数の許可証なども札束とともに公開された。
警視庁のアウィ・スティヨノ広報局長が押収品の中身や逮捕の経緯を説明すると、記者団からは「事実関係をどのように把握したのか」、「不正疑惑のある船員らの名前は」などと質問が矢継ぎ早に飛んだ。
規制線の張られた一室を見張っていた警察官は「大統領が視察したため、通常の捜査時より厳重な警備態勢が敷かれている」と説明した。
運輸省のリド広報官は「業務窓口は通常午後4時まで開いているが、きょうは例外措置で早めに閉めた」と語った。(佐藤拓也、写真も)