伝統守り、次世代へ バティックは「生きる力」

 ジャワ島とスマトラ島の沿岸部で作られるバティック(ろうけつ染め)を紹介するイベント「スリシック・バティック」(コンパス紙主催)で、西ジャワ州チルボンで100年以上前からバティックを作り続けている一族が出展していた。一族の5代目というウカ・マシナさん(65)は「バティックは生きる力を与えてくれる」とその奥深さを話してくれた。                               
 スリシック・バティックは4〜9日、中央ジャカルタの文化センター「ブンダラ・ブダヤ」で開かれた。
 チルボンのトゥルスミー村にあるバティック工房「バティック・プトゥリ・マシナ」のオーナー、ウカさんの一族は、王宮や雲などをモチーフにバティックを作ることが多い。古来、東西交易の重要な貿易港だったチルボンのバティックは、高度な技法で描かれるしなやかな細い線が特徴とされている。
 主な顧客はバリだったが、爆弾テロが発生した2002年以降、注文は3割に減った。その後、世界遺産に指定され、「バティックの日」が制定された09年からはジャカルタやソロ、スマランなどの地域からこれまで以上の注文が来るようになった。
 現在、ウカさん一族には25人のバティック職人がいるが、デザインを創ることのできる人はわずか3人だという。
 5人の息子がいるウカさん。チルボンの伝統を後世にも残したいとの思いから、息子のうち3人は地元のバティック作りに携わっている。五男のアフサンさん(33)は、大学で観光学を学び、現在はバティックの勉強の傍ら、スラバヤでマーケティングを学ぶ。
 ウカさんによれば、時代に合ったモダンバティックも必要だが、伝統的なバティックを残すことの方が今は重要。伝統的なバティック作りを参考にしなければ、美しい線や美しい色は作り出せないからだ。ベテランの職人が次世代に伝統的なバティックの全てを教え、彼らはその古くからの知恵を基に現代的なバティックを創る。
 ウカさんは「バティックは奥が深く、私たちに生きる力を与えてくれる。私や夫の世代が死んでも、息子たちのおかげでチルボンのバティックは生き残り、私たちの精神は受け継がれる。これほどうれしいことはないよ」と語る。
 昨年からオンラインでの販売も始め、都市部や海外からもオンラインで注文を受けるようになった。これも時代の流れだが、ウカさんは「インターネット販売は多くの利点をもたらしてくれた。しかし、お祝い事などで特別なバティックを買う際は、バティックの産地に行って、直接見て、手で触れて、作り手の思いを知って欲しい。画面上では質や色は全く伝わらないのだから」と話した。(江原早紀、写真も)

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