「今年は投資実行の年」 「新興国の『優等生』に」  飛躍期待されるイ経済 三菱東京UFJ銀  田中亘支店長に聞く

 先行き不安定な世界経済の状況が続く中、昨年は活況に湧いたインドネシア経済。昨年末から今年初めにかけて、格付け機関による格付けが相次いで投資適格入りし、さらなる飛躍に期待が高まる中、最低賃金をめぐる労働争議が投資家に冷や水を浴びせる格好となった。そのインドネシア経済は今年、どのような方向に向かうのか。三菱東京UFJ銀行ジャカルタ支店の田中亘支店長(本店執行役員)は「昨年は二輪・四輪やそのサプライヤーなどで投資計画の上方修正が相次いだ。今年は実行の年になる」との見方を示した。

 近年のインドネシア経済について、「二〇〇八年のリーマンショック以降、マクロ経済は年を追うごとに確実性を増してきている」と評する田中支店長。
 「経済成長は六%台を維持し、今年も六%台半ばになるだろう。しかも、順調な内需の拡大と資源を中心とした安定した輸出に支えられて、経済成長という点では死角に乏しい」
 また、中国、インド、ブラジルなど、新興国の多くがインフレに苦しむ中、インドネシアは高成長(六・五%、二〇一一年見込み)と低インフレ(前年同月比三・七九%、二〇一一年十二月末)を両立させていることが最大の強みと指摘する。
 マクロ経済の安定感により、将来への見通しがより確実性のあるものとなり、債券や株式など市場への資金流入も加速。昨年九月の欧州金融不安ではホットマネー(短期資金)が流出する局面もあったが、中銀が潤沢な外貨準備高を取り崩してルピア防衛に回った結果、新興国でも通貨の下落率が小さくて済み、今年に入り投資適格入りを果たしたことで資金が戻り始めているという。
 実体経済も内需に注目した投資が続いていると分析。「これまではBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が注目され、インドネシアは周回遅れだったかもしれないが、最近は新興国の中の『優等生』にのし上がってきた。人口規模や平均年齢が二七、八歳という若い国ということで、この状況が中期的な経済成長の離陸トレンドとなる始まりに来たのではないか」との見解を示した。

■投資の質も上がる
 直接投資の状況について、「二〇〇九年から年を追うごとに、調査段階から具体的な投資の実行に移ってきた。昨年は特に、前年に投資を決定した時からさらに売上や生産台数などを上方修正するところが目立った。進出の数だけでなく、スピードと金額、切迫感が拡大している。大手から中小に裾野が広がっているのも特徴だ」と昨年までの動きを振り返る。
 今年については、「昨年は上積みの計画を作ったので今年は実行の年。並行して、自動車産業の政策やインフラ整備などを見極めながら、さらに一段上のレベルを狙う検討が始まるのではないか」とさらなる投資拡大に期待を示した。

■欧米、中国経済に着目
 一方、今年のインドネシア経済の展望については、欧州各国の財政不安やそれに伴うユーロ不安の影響がどの程度のものになるか、また米国の景気回復のスピード、また中国がその影響をどれだけ受けるかが鍵になると指摘する。
 「欧米、中国が大崩れしないということがインドネシアの安定的な成長の一つの鍵」と強調。また、世界的な景気後退で、中国やインド向けの石炭など、インドネシアの鉱物資源の輸出にかげりが出て、需要減で資源価格が大幅に下がると、貿易収支にも悪い影響が出るという可能性も捨てきれないという。

■着実なインフラ整備を
 インドネシア自体の課題として、インフレ率の抑制とインフラの整備、最近の賃金の問題に端を発する労働争議を挙げる。
 「食料価格の上昇や、工業製品を輸入に頼ることから、依然としてインフレを懸念する必要がある。インフラの整備の遅れが、二輪・四輪車の市場拡大の阻害要因として目立ってきている。賃金問題が労働争議に発展し、企業の安定的な操業や治安に影響を及ぼすような状況に発展すると、これまで続いてきたインドネシア投資熱が一気に冷めかねない」

■イ経済に貢献する年に
 銀行業界では、日本の地方銀行とインドネシア大手銀行の提携が進んでいる。
 田中支店長は「中国やタイよりは件数として少ないかもしれないが、初めての海外進出がインドネシアという中堅・中小企業が増えており、地銀はそのような地元企業をサポートしなくてはいけないということだと思う。メガバンクも同様で、日系企業の一段の投資支援がますます重要になってくる」と説明する。
 その上で、「欧州の金融不安を背景に欧米銀行の貸出余力が低下している。そのため、比較的バランスシートに余裕がある邦銀が、インドネシア市場で地場の大手企業に資金供給することが一層求められている。商売のチャンスになるというのは当然だが、それ以上に邦銀が頑張らないと、インドネシアの資金調達がうまくいかなくなる。日系企業のサポート強化とともに、地場企業のサポートも今年取り組むべき大きなテーマだ。これまで日系優位であった日系と非日系の取引比率も、全体のパイが拡大しながら、半々になっていくだろう。また、日系企業と地場企業をまたぐビジネスを積極的に仲介して双方に利益をもたらすこともわれわれの使命だと考えている」と述べ、インドネシア経済への一層の貢献にも意欲を見せた。

◇田中亘(たなか・わたる)
 1959年4月、東京生まれ。慶応大学商学部卒業後、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。一貫して営業畑を歩み、93―2000年にカナダ・トロント、2003―05年にマレーシア・クアラルンプール、06―08年に中国・上海に駐在。帰国後、大阪営業本部を経て、2011年1月から現職。趣味はゴルフと地図を読むこと。ゴルフは「ボギーペースです」。

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