租税特赦 目標の2% 施行から2カ月で 「納税強要」に批判も

 タックス・アムネスティ(租税特赦)法の施行から2カ月が経過した。納税額は目標の165兆ルピアの2%、3.6兆ルピアにとどまっており、政府は運用に関する細則を策定し、納税者への周知を徹底させている。一方で、中小企業などからは徴税強化の標的になり、納税を強要されているとの批判も続出。政府はあくまで富裕層の資産を最重視していると火消しに躍起になっている。

 1日時点で租税特赦法を適用した納税額は3兆6893億ルピアで、目標の2%にとどまる。納税申告額は176兆ルピアと、8月25日の59兆ルピアから1週間で3倍に増加。シンガポールや香港で説明会を実施するなど周知活動を展開した結果、海外からの環流資産申告は10.9兆ルピアと同期比で10倍増となり、申告ベース全体では急伸している。
 アピンド(経営者協会)のソフヤン・ワナンディ顧問会議議長(副大統領首席補佐官)は、8月までは海外での手続きに時間がかかり、資産を動かすには至らなかったケースが多いと指摘。9月中旬には約120の実業家が租税特赦を適用し、環流目標1千兆ルピアの60〜70%には達するとの予測を明らかにした。

■近く違憲審査も
 一方で租税特赦法の施行に対する反発も高まっている。憲法裁判所には同法の違憲審査請求が相次ぎ、憲法裁は31日、複数の労組が請求した違憲審査の初審理を開いた。
 国内第2のイスラム団体、ムハマディヤも税務職員の準備ができていないとして運用中止を要求。近く違憲審査を請求する構えを示している。
 また、中小企業連絡フォーラム(FKPKMI)などは、同法で定めた中小・零細企業の定義が中小・零細企業法(2008年)と異なり、収益や資本金などが低く設定されていると指摘。納税の強要は憲法違反に当たると違憲審査を請求する方針だ。
 ソーシャルメディアでも批判が渦巻いており、ツイッターでは「納税ストップ」のハッシュタグが注目を集める。税収確保を名目に、国民に納税を強要しているとの批判が噴出している。
 これに対し、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は、租税特赦法はあくまで海外滞留資産を国内へ移動させたり、富裕層の資産を国内投資に向けたりすることが主眼と強調。細則となる財務省税務総局長規定を通じ、納税者の理解を得られるよう周知を徹底していく方針を示している。
 このほど発令された税務総局長規定(2016年第11号)によると、納税申告の対象外となっているのは、月収450万ルピア以下の農民、漁民、定年退職者、海外出稼ぎ労働者などの個人ら。1年の183日以上、海外に在住し、インドネシアで収入を得ていない納税者なども例外とする。税務総局や国営銀行などは伝統市場で説明会を開くなど、さまざまな層の納税者を対象にした周知活動を展開している。
 納税義務について、スリ・ムルヤニ財務相は1日、西ジャワ州デポックのインドネシア大学での講演で、「国民の50%の資産を1%の国民が保有している。彼らが適切に税金を払えば、国の大きな利益になる」と語り、富裕層に納税を促した。
 また自身の例を挙げ、「私は世銀で働いていた6年間、納税義務はなかったが、課税対象となる新たな資産や所得はないことを申告していた」と説明。さらに「私は定年後はインドネシアで過ごし、死ぬのもインドネシア。子どもや孫もここにいる。私はインドネシアの一部であり、インドネシアは私の一部」と述べ、税金を納めることは国民の義務であると同時に、国の発展に欠かせないものであることを強調した。(配島克彦)

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