モール裏は洪水拡大 開発で排水能力低下 南ジャカルタ・クマン
27日の豪雨で大規模な洪水が発生した南ジャカルタ区クマン。クルクット川の増水で崩れた壁の復旧作業が進むが、外国人も訪れるおしゃれな地域として開発が進む影で、巨大なモール裏手の住民たちは排水能力が低下したと不平を漏らす。アホック・ジャカルタ特別州知事は流域の土地を買い上げ、川幅を広げるなど治水事業に取り組む考えだ。
クマンの入り口、アンタサリ通りからクマン・ラヤ通りに入る時に小さな白い橋を渡る。その下を流れるのが氾濫したクルクット川だ。川幅は以前20〜25メートルあったが、家屋が川沿いに立ち並ぶようになり、今では約5メートルほどに縮小。日本人が多く住むアパートメント「グリヤ・プラパンチャ」の向かいの約10メートルの壁が崩れたのは、27日の午後5時過ぎだった。
壁は以前同地にあった「ガーデンホテル」に沿うように建てられていた。川は壁の付近で急角度に曲がっており、増水した川の水が壁にぶつかり大きな水圧がかかったとみられる。
近くでたばこの露店を36年営むアパンディさん(59)は「2002年も同じ壁が崩れて大変だった。音はしなかったが、くるぶし辺りだった水位がたちまち1メートルになったので、近くの建物に怖くなって逃げた」と話した。
壁の修復工事は州水道局が28日朝に着手。高さ2メートルの壁を造り、川幅を広げる作業にあたり、31日までに壁は1.2メートルまで完成した。
川沿いの通りを南に進んでいくと、巨大なリッポー・モール・クマンにたどり着く。モール入り口を通り過ぎ、駐車場スペースへ左折すると、高低差5メートルほどの急な坂道。そのすぐ脇のクマン6通りに住むアグンさん(39)は「子どものころから遊んでいた田んぼやサッカー場は、モール建設でなくなった。以前から雨水が流れ込んできたけれど、水は田んぼのかんがいにたまっていた。開発地区の敷地の20%は排水用に充てるとの規定があるにもかかわらず、守られていない」と不満を漏らした。
ほかの場所でも壁が崩れた。クマン・スラタン10通りも他の場所と同じように、川に向かって下り坂になっている。川沿いには、30年以上前から空き地があり、その敷地を囲うためだけの壁が三つも崩れた。その脇で軒を連ねていた小さな家々が、最大1.5メートルにもなった洪水の被害を受けた。
アホック知事は、クルクット川のしゅんせつを進めるとともに流域の土地を買い上げ、川幅を20メートルまで戻すことで洪水調整を図る方針を示しているが、同地区の土地収用の予算は来年に持ち越される見通しという。
クマン・スラタン10通りで飲食店を営む男性(62)は「雨が降ればいつも洪水になる。もう慣れっこになった」と話す。濡れたマットレスが家の壁に並んでいた。(中島昭浩、写真も)