新エネ鉱相を解任 アルチャンドラ氏 米国と二重国籍 入閣後わずか20日
ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は15日、インドネシアと米国の二重国籍が発覚したアルチャンドラ・タハル・エネルギー鉱物資源相(45)を解任することを決定した。米国のパスポートを所持し、国籍法や大臣法に抵触すると判断した。先月27日の第2次内閣改造で初入閣したばかりで、ジョコウィ大統領の任命責任が問われそうだ。
中央ジャカルタのイスタナ(大統領宮殿)で午後9時から開かれた会見で、プラティクノ国家官房長官が「大統領はアルチャンドラ氏の解任を決めた」と発表した。16日からルフット・パンジャイタン海事調整相(68)が後任代行を務める。
これに先立ちヤソナ・ラオリ法務人権相は15日、報道陣に「(アルチャンドラ氏は)インドネシアのパスポートと、米国のパスポートの二つを持っている」と明らかにしていた。インドネシアでは二重国籍は認められていない。
国籍法に基づき、インドネシア国籍者は、自らの意志で他の国籍を得た場合、インドネシアの国籍を失う。国籍の喪失の手続きには法務人権相の署名が必要。
ところがアルチャンドラ氏のケースでは手続きが行われておらず、同氏はインドネシア国籍を持ったままで、インドネシアのパスポートを使ってインドネシアに入国していたという。
国籍法ではまた、国籍取得の条件として、申請時に、インドネシアに継続的に5年以上居住していることが求められるため、2012年に米国籍を取得したとされるアルチャンドラ氏はインドネシアで国籍を再取得する条件を満たしていないことになる。
アルチャンドラ氏は1996年に米国に渡り、海洋工学を学んだ後、同国でコンサルティング会社やエネルギー会社社長を務めるなど、約20年にわたり米国を拠点に暮らしていたが、今回の内閣改造でスディルマン・サイド前エネルギー鉱物資源相の後任に抜てきされ初入閣した。
プラティクノ国家官房長官は14日、アルチャンドラ氏の帰国はジョコウィ大統領直々の要請に基づくものと説明していた。地元報道によれば、アルチャンドラ氏の入閣打診には、ジョコウィ大統領と近く、アルチャンドラ氏の友人であった、大統領府のダルマワン・プラソジョ氏が携わった。
一連の問題は13日ごろ、メッセージアプリ「ワッツアップ」などのソーシャルメディアで、アルチャンドラ氏が12年3月に米国籍を取得したとの情報が出回り、法務人権省などが調べを進めていた。
二重国籍報道を受け、アルチャンドラ氏は14日、インドネシアのパスポートの所持を主張していた。
有識者や国会議員からも追及を求める声が上がっていた。スハルト政権の経済政策のブレーンを務めた経済学者エミル・サリム氏は、ツイッター上で14日、「大臣候補者の資格情報をまず調べなかったのか?」と疑問を呈していた。経済学者のファイサル・バスリ氏は15日、自身のウェブサイト上で、国籍法や大臣法上の問題を指摘し、政府はアルチャンドラ氏を解任すべきとの見解を示していた。(木村綾)