スカルノ氏ゆかりの作品 国立美術館で初絵画展 イスタナ所蔵の28点
中央ジャカルタの国立美術館で2日、全国各地のイスタナ(大統領宮殿)所蔵絵画28点を集めた初の展覧会が始まった。30日までの会期中に迎える独立71周年に向けた記念行事の一環。初代スカルノ大統領ゆかりの品が多く、自ら筆を加えた作品も展示されている。
北スラウェシ州マナド出身の画家ヘンク・ンガントゥン氏(1921〜91年)の作品「ムマナ(弓を射る)」(43年)はスカルノ氏が「モデル」になった。西ジャワ州のボゴール・イスタナ(大統領宮殿)の所蔵で、複製とオリジナルが展示されている。
日本占領下の44年、文化政策を担っていた啓民文化指導所(ジャカルタ)で開かれた展示会でこの絵を見たスカルノ氏は「国が前進することの象徴である」と、一目で気に入った。スカルノ氏が側近を通じ購入したいと伝えると、弓を引く男の右腕が未完成だと答えた。「私がモデルになろう」とアトリエに出向いたスカルノ氏を前に、ヘンク氏が30分ほどで完成させ、スカルノ氏はすぐに車で絵を自宅に持ち帰ったという。
同作品は、スカルノ氏が45年8月17日、自宅で独立を宣言した際、記者会見したスカルノ氏の背後に飾られており、思い入れの強さがうかがえる。
メキシコの巨匠ディエゴ・リベラ氏(1886〜1957年)の、花を持つマレー人の少女を描いた作品(1955年)は、スカルノ氏がメキシコの大統領を口説き落として手に入れた作品とされている。
当時のメキシコではリベラ氏の作品は国の宝と言われ、海外への持ち出しが特別法で禁止されていた。にもかかわらず、スカルノ氏のラブコールに当時のメキシコ大統領アドルフォ・ロペス・マテオス氏が根負けし、秘密のルートで持ち込まれた。ガイドのフルコンさん(27)は「インドネシアに入ってきた時期は不明」と話した。
他にもイスタナの宮廷画家が未完成のまま放置していたデッサンに、スカルノ氏が彩色して完成させた作品「リニ」などが来場者の目を引きつけていた。
会場は、独立記念塔(モナス)広場東側のメダン・ムルデカ・ティムール通りに面した入り口から広場を挟んで正面にある展示場A。入場無料。会場左隣のセミナーホールの一室でタグを受け取って入場する。
会期中の毎週日曜には、ガイドが絵画の説明をするツアーがある。午前10時〜正午、午後3時〜同5時の1日2回実施される。(中島昭浩、写真も)