偽造ワクチンに不安の声 東ジャカルタで再接種スタート 全国で流通網調査へ
予防効果のない偽造ワクチンが出回っていた問題で、保健省などは18日、偽造ワクチンを接種した患者への再接種を東ジャカルタの公共医療施設などで無料で始めた。幼い子どもを持つ親たちからは不安の声も聞かれる。これまでに偽造ワクチンは9州で確認されており、政府や警察からなる調査チームが全国で調査する方針だ。
保健省によると、東ジャカルタ区では、チラチャスの産科クリニック「ビダン・エリー」で197人、ハラパン・ブンダ病院で約20人に偽造ワクチンの接種が確認された。西ジャワ州ブカシのサヤン・ブンダ病院でも20人の被害を確認。これらの患者に対し、順次再接種を提供していくとしている。
再接種の窓口の一つ、東ジャカルタにあるチラチャス郡公立病院では、午前9時ごろから子どもを抱えた親たちが母子手帳を手に受付に並んだ。
主婦のレトノ・ドゥウィさん(30)は4カ月の息子が3種混合、BCG、ポリオのワクチンを受けたばかり。「ハラパン・ブンダ病院で接種したから心配になって来た。息子の体に何も起きないといいけど」と不安をのぞかせる。
主婦のアストゥティさん(37)は5歳と2歳の娘がいずれもビダン・エリーで3種混合ワクチンを接種した。「偽造ワクチンと聞いてがっかりした。子どもの命に関わることだから心配」と漏らす。
チラチャス郡病院で働く小児科医のアクニ・ハルタティ医師(33)は「偽造ワクチンの場合、複数回接種したとしても免疫がつかず、接種していないのと同じ」と話す。この日、午前11時時点で、偽造ワクチンを接種したとされる患者約20人を診療し、異常はこれまでに見られないという。アクニ医師は「偽造ワクチン接種の疑いがある場合は、公立病院やプスケスマス(診療所)を受診し、小児科の専門医に相談を」と呼びかけた。
■大統領が視察
ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は18日午前、東ジャカルタ・チラチャス郡のプスケスマスを訪れ、ニラ・ムルック保健相らと共に再接種の様子などを視察した。偽造ワクチンに対する調べは「慎重さと時間を要する」と説明し、再接種を速やかに申し込むよう呼びかけた。アホック知事も同日、特別州内では再接種を無料で行うとして受診を促した。
偽造ワクチンは2003年ごろから流通していたとみられ、政府は調査チームを32州で始動させた。医薬品食品管理庁(BPOM)が各医療施設からワクチンのサンプルを採取し偽造ワクチンの発見に努める。これまでに偽造ワクチンが見つかったのは9州の37施設に上る。9州はリアウ、南スマトラ、ランプン、バンテン、ジャカルタ、西ジャワ、東ジャワ、バンカブリトゥン、リアウ諸島の各州。(木村綾、写真も)