2分間の出来事 友人が証言、映像も コーヒー毒殺事件
「ミルナがコーヒーを飲んでから倒れるまで、2分くらいだった」。ワヤン・ミルナ・サリヒンさん(当時27)が毒入りのベトナムコーヒーを飲んで死亡したコーヒー毒殺事件で、事件当日同席し、ミルナさん、ジェシカ・クマラ・ウォンソ被告(27)と共通の友人のブン・ジュウィタ(ハニ)さん(27)が証言した。13日、中央ジャカルタ地裁で開かれた第5回公判では、証言のほか、ミルナさんが意識を失う瞬間やジェシカ被告が一部始終を見つめる様子を捉えた監視カメラ(CCTV)の映像も公開された。
事件は1月6日、中央ジャカルタのモール「グランドインドネシア」のカフェ「オリビエ」で起きた。検察側が公開した映像によると、ジェシカ被告は午後3時半、カフェに入った。ミルナさんとハニさんは同5時16分にカフェに到着し、同5時18分には、ミルナさんを中央に挟んで3人が席に着いた。ミルナさんがテーブルに置かれていたベトナムコーヒーを飲み、ハニさんらに話しかけ、手であおぐなどして匂いを確認する姿があった。
ハニさんの証言によると、ミルナさんはジェシカ被告とハグを交わして席についてすぐ、用意されていたベトナムコーヒーを見て「前に座っていた人が飲んでいたもの?」と尋ねたが、被告はミルナさんのコーヒーだと説明した。ミルナさんはコーヒーをかき混ぜ飲んだが「ひどい味」などと言い、匂いを嗅ぐなどした。
映像によると、その後、ジェシカ被告は水を注文しようと席を立った。その間にハニさんがコーヒーを味見。ミルナさんは口直しに甘いものがほしいと言い、2人は何か注文しようとメニューを見ていた。
ハニさんは「ミルナからまずいと聞き、恐る恐る口を付けた。コーヒーの匂いは全くしなかった。ほんの少し舌に触れる程度だけだったが、口に含んだ瞬間、苦みや辛み、熱を感じ、驚いてすぐ口を離した」と証言した。
映像によると、ジェシカ被告が席に戻って数十秒後、それまで話していたミルナさんが椅子の背もたれにぐったりともたれ、頭を天井に向けたまま意識を失った。店員らが駆け寄り、ミルナさんは運び出された。ジェシカ被告はその一部始終を立って黙って見つめていた。
映像は何度も停止し、繰り返し映し出され、その度にハニさんが検察官や3人の裁判官の質問に答えた。ハニさんによると、3人の座席はすでに予約されており、ベトナムコーヒーの氷は溶け切っていたという。
病院で、コーヒーに毒が入っていた疑いが強まると、ハニさんは薬を処方され、できるだけ多くのご飯を食べ、水を飲むよう言われたという。
検察側はさらに、ミルナさんが飲んだ毒入りコーヒーが入った瓶を提示。ふたを開け、裁判官や弁護団らが匂いを嗅いだ。
公判の最後、ジェシカ被告は裁判長に話す機会を与えられたが、「ありがとうございます。コメントはありません」と答えた。
次回公判は20日に開く予定。(毛利春香、写真も)