【火焔樹】 猪突猛進ということ
インドネシアのリーダーは物事の決断がとても早い。調整、根回し、そしてリスク回避と言いながらなかなか物事が決まらない日本とは比較にならない。
ある調査結果でインドネシアは世界でリスクを取る国ナンバーワン、日本はリスクを取らない国ナンバーワンとあり、石橋をたたいて渡る国民性と一発勝負のそれがはっきり分かる。
ならば、インドネシアの社会が目まぐるしく変化しているかといえばそうでもない。リーダーが物事を決めてもそれについていけない人が多く、トップと組織の構成員の能力の違いが如実に現れる。持てるものと持たざるものの格差は経済的な面だけではないようだ。
それをも計算づくで決断を下すリーダーなら賞賛もされるが、障害が 多々あることが明白にもかかわらず突き進むのは、猪突猛進と言われても仕方あるまい。目標に向かって一途にひたすら勢いよく進む様は格好いいが、思慮深さに欠けて後先考えずにわけも分からず突き進んでしまうと、しなやかさや周りへの配慮にも欠け、何も見えなくなる。
その結果、物事が失敗すれば目も当てられない。しかし、猪突猛進をもう少し深く考えれば、勢いで障害物を突き破っていくので、自分の能力が障害物より高い場合は力強くて頼もしくスピード感もあり、成熟していないインドネシアの一部の社会では吉とでることが意外と多いことも見逃せない。
ある人に「芦田さんは猪突猛進タイプですね」と言われた。身に覚えがありズバリ核心を衝かれたようで久しぶりに 「ドキッと(terkejut)」した。
ある小説に、「『頑張れ』は、間違ってないから、我を張って突っ走れ! という意味だ」とあった。もう一つ、野球に例えると、ファウルラインぎりぎりのボールが飛んだときに「フェアだ! 突っ走れ!」と思うこと。
ファウルになるかフェアになるかは走ってみなければわからない。ファウルは打ち直しがきくのだから、失敗すればやり直せばいい。勝手な解釈で申し訳ないが、こんなポジティブな意味だったのなら、自身が猪的な一面を持つことを認める私としてもうれしい限りである。(会社役員・芦田洸)