スマホ報告義務に抗議 ジャカルタの隣組・町内会
ジャカルタ特別州内の隣組(RT)や町内会(RW)の代表数十人が27日、ジャカルタ特別州議会を訪れ、スマートフォン用アプリ「クルー(Qlue)」を通して1日3回近隣情報を報告することを義務づけた知事令に抗議した。知事令を廃止しなければ、来年2月に予定されている同州知事選のボイコットも辞さないと、強硬姿勢を示している。
知事令は、アホック知事が目指す、IT技術を活用したスマートシティー政策の一環で、ことし4月6日に施行された。クルーを通すことで、RTやRW向けの年間5400億ルピアの州予算の透明化も目的という。
報告すべきとされた近隣情報は、街灯が壊れている▽洪水が発生している▽不審者がいる▽道路が陥没した――など、RTやRWに関するものであれば、写真を添付したり、文字だけでも何でも受け付ける。報告1回ごとに謝礼として、州政府からRTに1万ルピア、RWには1万2500ルピアが支払われる。しかし、RTやRWの代表は自分の仕事と兼任している場合が多く、抗議に訪れた代表らは「仕事を辞めて地域を見回り、謝礼を受け取るだけでは生活していけない。RTやRW向けの予算は、地域全体に使われるべきのもの」と主張した。
知事令の廃止を訴えているのは、南ジャカルタ・チランダックと北ジャカルタ・アンチョールのRTとRW。チランダックのRW団体を代表するアミルラ・カディルさんは「知事令には賛同できない。これは独裁者のすることだ。廃止しなければ、来年の州知事選をボイコットする」と語った。
アホック知事は同日、州庁舎で「報告には写真を添付しなくてもいい。苦情だけでなく、善行があれば、それを報告してくれても構わない」と述べ、近隣に注意を払うことが大切だと理解を求めた。
RTは日本が第二次大戦中、占領下のジャワで導入した「トナリグミ(隣組)」が起源で、スハルト体制時に行政の最末端を補佐する組織として整備された。住民を統制するとともに、選挙の時には隣組ごとに投票所を設営する。30〜50戸で構成され、RWはRTがいくつか集まって構成される。ジャカルタ特別州内には約3万3千のRTがある。(中島昭浩)