【車いすに乗って】(上) 使いやすく多くの人に 障害者が組み立てる WAFCAI 

 北ジャカルタ・スンタルにある車部品メーカーのデンソー・インドネシア敷地内に、車いすを寄贈する財団法人アジア車いす交流センターインドネシア(WAFCAI)がある。ここで、車いすを使用する障害者が車いすを組み立てる作業が11日から始まった。組み立てた車いすを貧困層の障害者に寄贈するとともに、障がい者の雇用支援につなげる試みだ。

 同センターで働く2人のうちの1人、デデン・ユスプさん(29)は2010年、オートバイで走行中にトラックと衝突。左足は3回の手術を経て切断、負傷した右足も感染症で11年に切断し、車いす生活を続けてきた。事故後はトレーニングを受け、社会省の支援を受けながら西ジャワ州カラワンの労働省で事務をしたり、中部ジャワ州ソロで写真家として働くなどしてきた。現在はブカシで妻と7歳の息子と暮らし、同社まで2〜3時間ほどかけてオートバイで通っている。
 障がい者が使いやすい車いすをより多くの人に届け、外の世界へ出てほしいとの思いで応募した。「車いすをメンテナンスする技術を身につけることができれば、修理をしたり調整したりして、自分の身の回りで車いすを使っている人をいつでも助けられる」と笑顔で話す。2人は車いすに座りながら、あるいは地べたに座って、作業する。まなざしは真剣そのものだ。
 車いすは届け先の子どもらが使用する体の大きさや障害の症状などに合わせて調整する。現在は8時間働いて1人で2台仕上げるのがやっと。慣れれば3台ほど作れるようになるという。
 WAFCAIは15年1月末に開所して以来、ジャカルタ特別州や西ジャワ州ブカシ県、バンテン州タンゲランなどを中心とする西ジャワ州で、これまでに120台を寄贈してきた。同センターの職員が一軒一軒訪ね歩き、障害者の状態や家庭環境、収入などを細かく調査。その後、体を採寸し、個々人に合った車いすを提供している。ブカシ県ではことしから、社会局と協力し、ニーズの調査を進める。
 寄贈する車いすは、ジョクジャカルタ特別州にある非営利団体UCPRUKから購入。この団体は本部が米国にあり、車いすの開発・生産・寄贈を行っている。現在WAFCAIは年間80台を購入しており、来年は100台、10年後には200台の購入を目指したいという。資金は日本で集めた寄付金が中心だ。
 WAFCAIの福原春菜さんによると、インドネシア国内では、政府や各国の支援で年間1000台ほどの車いすが提供されたこともあったが、提供後のサポートがなく放置されたままだという。「病院で誰でも使える車いすは子どもには大きすぎ、危険だったりうまく使えないことがほとんど。また車いすは消耗品。修理が必要なだけでなく、子どもは体が大きくなるし、障害が重くなることもある」と話す。
 WAFCAIでは半年ごとに各家庭を訪問して修理をするなどフォローアップを実施。地域に根付いた活動にはジャカルタの事務所だけでは困難なため、今後はブカシやタンゲランなどにも事務所を設けたいという。
 子どもの障害が重くて母親が家から出られない、交通費を払うお金がないなど、同センターまで来られない家庭も多い。WAFCAIでは引き続き、生活が苦しい貧困層に焦点を置き、支援を広げる。「下肢障害で車いすが必要な人は、少なくとも100〜200万人ほどいるとされている。外に出られず1日中家に引きこもり、ベットの上の天井だけを見て過ごす子どもがたくさんいる。外に出て少しでも世界を広げてほしい」(毛利春香、写真も)(つづく)

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