合同掃討作戦が長期化 サントソ容疑者追跡で難航 警察・軍の過激派対策
イスラム過激派組織「東インドネシアのムジャヒディン(MIT)」の指導者とされるサントソ(別名アブ・ワルダ)容疑者を追跡する国家警察と国軍の合同掃討作戦が長期化している。中部スラウェシ州ポソ山間部に各部隊から2500人を派遣し、テロ対策では事実上、初の大規模な軍事作戦を展開しているが、国軍部隊の関与や合同作戦の長期化を疑問視する声も出ている。
ポソ山間部を拠点に軍事訓練やテロ要員勧誘などを展開しているサントソ容疑者は2012年以降、スラウェシ島各地で殺人、誘拐事件などに関与。14年7月に過激派組織イスラミック・ステート(IS)への連帯を表明したとされる。米国務省は今月22日、特別指定国際テロリスト(SDGT)に指定した。
国家警察と国軍の合同部隊は今月に入り、食料を求めて下山した同容疑者の部下を相次いで射殺、この中にウイグル人2人がいたことから、他にも複数のウイグル人が行動を共にしているとの見方を強めている。
ティト・カルナフィアン国家テロ対策委員会(BNPT)委員長は地元メディアに対し、「シリアでIS指導者となったインドネシア人とウイグル人が合流しているとしても驚くべきことではない」と指摘。中国新疆ウイグル自治区で大規模な暴動が発生した14年以降、ウイグルの分離独立派組織はシリアやイラク、東南アジアなどに渡ったとされ、ISやサントソ容疑者のMITなどを独立運動に利用しているとの見解を示した。
警察と軍はサリナデパート前爆破テロ事件が発生する直前の1月初旬、合同掃討作戦を開始。警察テロ特殊部隊(デンスス88)や中部スラウェシ州警に加え、陸軍戦略予備軍、陸軍特殊部隊、海兵隊の計2500人を動員し、ポソ山間部に投入している。
以来、3カ月近くが経過したが、約30人を引き連れているとされるサントソ容疑者は捕まっていない。今月20日にはポソ山間部に陸軍のヘリコプターが悪天候で墜落し、軍人13人が死亡する事故が発生。国軍部隊の派遣や掃討作戦の長期化に疑問を呈する声も出ている。
国軍のテロ対策関与について、国際戦略研究所(CSIS)のエファン・アラクスマナ氏は地元メディアに「いつ、どのように、どのような状況で投入するかが問題だ」と指摘。政府を標的にした大規模な攻撃など緊急事態への対処に限定するなど明確化し、国軍投入にはジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領が政治的決断を下す必要があると強調した。
また、治安戦略研究所(ISESS)調査員のハイルル・ファフミ氏は「警察は昨年末までのサントソ容疑者逮捕を目標に掲げたが果たせず、軍との合同作戦も当初は60日と期間を限定したにもかかわらず延長した。掃討作戦の規模を拡大し、テロ対策予算を確保するための『事業』と位置付けているとの印象を与えかねない」と批判する。
これに対し、中部スラウェシ州警本部長を務めたこともあるバドロディン・ハイティ国家警察長官は、丘陵地が広がる地形や山間部の悪天候などポソ独特の困難な状況が背景にあると説明。すでにサントソ容疑者の活動範囲を特定しており、逮捕は時間の問題としている。(配島克彦)