ジャカルタ沖に連絡船 プラウスリブ諸島結び
ジャカルタ特別州プラウスリブ県の4諸島と北ジャカルタのスンダ・クラパ港を結ぶ連絡船が28日、就航した。州政府は、諸島間とジャカルタを結ぶ交通の利便性を向上させることで、貿易産業や漁業などで諸島の経済成長を後押しするとともに、開発を進めていきたいとしている。
同日には就航式が開かれ、ジャカルタ特別州のアホック知事やイグナシウス・ジョナン運輸相らが出席した。ジョナン運輸相によると、国営船舶ペルニが運航する船で、スンダ・クラパ港から出発しウントゥン・ジャワ島、ティドゥン島、プラムカ島、クラパ島まで約80キロを結ぶ。定員は114人で、貨物は100トン積載できる。乗客だけなら225人まで乗船できる。
運賃は片道1人1万5千ルピア。毎日午前7時から運航し、速度12ノット(時速約22キロ)で往復にそれぞれ4時間をかける。船内にはクリニックや礼拝所、飲食スペースもあるという。
漁民移住計画には反発
連絡船就航の背景には、同県と北ジャカルタの開発を進めるため、漁民の移住を進めたいジャカルタ特別州政府の意向がある。同州政府は、プラウスリブ諸島の中央付近にあるティドゥン島東側のティドゥン・クチル島に公営住宅(ルマススン)を建設し、北ジャカルタ区の漁港「ムアラ・アンケ」の漁民を移住させる計画を掲げているが、島の住民が反対している。
アホック知事は、ムアラ・アンケの漁民が採った二枚貝に重金属が含まれ、汚染された海で漁をしていることから、より環境の良いプラウスリブ県への移住を進めている。移転した漁民には養殖業など新たな仕事に就けるよう支援する計画だ。
さらにプラウスリブ諸島の住民は交通の便が悪く移動コストも高くつくことから、ジャカルタで魚介類などを販売できないと指摘。今後は、同県の住民に対しジャカルタと同県の島を無料で往復できるようにし、首都圏専用路線バス「トランスジャカルタ」の運賃も無料にするという。
一方、プラウスリブ県の市民団体のムアマル・カダフィ氏によると、ティドゥン・クチル島の住民はムアラ・アンケと同じ習慣や文化の残るパンガン島やクラパ島に移住するよう主張している。「両地の習慣や文化は大きく異なる。島がこれまで観光業を基盤としてゼロから培ってきたコミュニティーが破壊されることを恐れている」と話した。 ムアラ・アンケの漁民も移住に反対している。さらに同地の埋め立てで漁業ができなくなり、土地を追われるとして28日にデモを実施した。(毛利春香)