平均気温じわり上昇 15年水災害1600件に 気候変動に専門家警告

 米航空宇宙局(NASA)と米海洋大気庁(NOAA)は20日、2015年の世界の平均気温が観測記録の残る1880年以降最高となったと発表した。ボゴール農科大学(IPB)のアラン・コロピタン教授は「(インドネシアで)気候変動が起きていることは間違いない」と断言。専門家らは、気候変動が毎年各地で発生する洪水、干ばつ、森林火災など自然災害につながっていると警鐘を鳴らす。

 日刊紙コンパスによると、2014年の国内各地の平均気温は1980〜90年と比べ、0.16〜1.44度上昇している。日本の気象庁が20日に発表した、今月13〜19日に発生した「世界の異常気象速報」では東カリマンタン州バリックパパンで16日に平均気温が平年を約3度上回る30度を記録、18日に最高気温が34度を超えたことが紹介された。アチェ州バンダアチェでは平年の1月の月平均降水量は163.9ミリだが、14〜15日の2日間だけで160ミリに達した。
 IPBのアラン教授はコンパス紙の取材に、インドネシアではあまり発生しなかった熱帯低気圧が頻発するようになったと述べ、人々が気付かないうちに温暖化が進行していると話した。同大東南アジア気候変動研究室(CCROM―SEAP)のリザルディ・プル室長は、田植えの時期が読めずにいるとして特に農家への影響を懸念。ジャカルタ特別州内で農業を営むイブヌ・ナジブさんも「洪水や干ばつが増え作物の質も落ちる。生態系が乱れ害虫も増え、農家には大問題」と話す。
 国家防災庁(BNPB)のストポ・プルウォ・ヌグロホ報道官は洪水、干ばつ、森林火災などのインドネシアの災害の90%を占める水災害について「人為的な要因だけでなく、気候変動の影響もある」と指摘する。
 02年には200件未満だった水災害が15年には1665件を記録した。ストポ報道官はデータの収集率が上がったことも要因の一つとしながらも、特にサイクロンと洪水で発生数の増加が目立ったと説明。発生範囲やスケールも大きくなっている。さらに洪水のリスクが中程度から高程度の地域に6370万人が、土砂崩れのリスクが中〜高程度の地域に4090万人が住むと警告する。
 これらの水災害の原因となるエルニーニョ現象やその逆に東太平洋の赤道上で海水の温度が低下するラニーニャ現象の発生状況にも異常がみられる。ストポ報道官は「以前は3〜7年に一度起きていた現象が、現在はより頻繁に発生している」と話した。
 気候変動の原因は二酸化炭素などの温室効果ガスの発生によるものだ。米研究機関クライメート・セントラルは21日、インドネシアでの森林・泥炭火災が温室効果ガス増加の原因になっているとするリポートを発表した。
 世界資源研究所(WRI)によると、昨年、インドネシアの温室効果ガス排出量は東南アジアで過去最大規模の煙害が起きた97年以降最多を記録。「森林や泥炭地開発が主な原因」と指摘している。
 インドネシアは09年、温室効果ガス排出量を30年までに何も対策を取らなかった場合と比べ29%、国際支援を得られた場合には41%削減するとの目標を掲げた。
 先月パリで開かれた第21回気候変動枠組み条約締結国会議(COP21)でジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は「インドネシアは気候変動に率先して取り組む」と強調した。(木村綾)

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