新興教団襲撃に警戒 政府が信者帰還を支援 相次ぐ失踪者 「異端」ガファタル 食糧自給で支持拡大

 西カリマンタン州の奥地で14日、新興教団「ヌサンタラ・ファジャール運動(ガファタル)」信者の居住区が暴徒に襲撃されたのを受け、政府が沈静化に乗り出している。同教団は食糧自給などを掲げる社会団体としているが、全国各地で布教活動を展開、信者の誘拐や失踪とみなした家族が警察に通報する事例が約500件に達した。自治体は信者の帰還支援を進める一方、「異端教団」の排斥運動に警戒を強めている。

 警察の調べによると、ガファタルに絡む失踪者として届けがあったのは、ジョクジャカルタ特別州と中部ジャワ州で計92人。東ジャワ州ではスラバヤの39人をはじめ計315人、西ジャワ州は56人と全国で500人近くに上る。
 騒ぎはジョクジャカルタ特別州で先月、大学講師の女性が幼い子どもを連れ、夫を残して失踪したことがきっかけとなり、ガファタルの信者勧誘が加速しているとの見方が広まった。また近年、イスラムのシーア派や「異端」認定されたアフマディヤなどが強硬派の襲撃対象となってきたこともあり、政府や自治体が沈静化に乗り出した。
 ガファタルは2011年の設立当初、社会文化団体として同州バントゥル県に登録、海岸や道路の清掃活動などを実施していた。その後、少人数制の学校を開設、主婦対象の料理教室や宗教講話を通じ信者を勧誘したとみられる。
 イスラム学者会議(MUI)ジョクジャカルタ支部は昨年、ガファタルの教祖アフマッド・ムシャデック師がイスラムの最後の預言者ムハンマドに代わる預言者と主張していることなどを問題視して「異端派」と認定、県政府も非公認団体とした。
 バントゥル県の男性は地元メディアに対し、ガファタルが提唱する食糧自給プログラムに興味を持ったと話す。14年の時点で西カリマンタン州の奥地に用地を確保してあり、木造の長屋を多数建設。バントゥル県がガファタルの活動を禁止すると、家族とともに西カリマンタン州メンパワ県へ移住したという。
 耕作地の開墾はメンパワ県からさらに奥地のムラウィ県に拡大し、450ヘクタールの土地にナスやキュウリ、ショウガ、ウコンなどの作物の栽培を開始。都市部から2時間離れたへき地での自給生活を計画していた。
 しかし、メンパワ県2村で入植者が計1500人に達し、全国各地で失踪者に関する報告が相次いだのを受け、地元住民の間で不信感が高まり、居住区や農地の閉鎖を要求。14日には居住区を襲撃し、火を付けるなど暴動に発展した。
 ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領はコフィファ社会相に信者たちの保護や帰還支援を指示。カラ副大統領は「彼らは違法行為はしていない」としてイスラム団体などに協力を呼びかけた。
 居住区を破壊された信者たちは現在、西カリマンタン州ポンティアナックの陸軍施設に一時収容され、MUIや宗教省が更生プログラムを実施する予定。(配島克彦)

◇ ガファタル 教祖アフマッド・ムシャデック師が2011年に興した新興宗教。ムハンマドに代わる預言者と主張し、農本主義を軸に食糧自給などを提唱する。イスラム強硬派組織インドネシア・イスラム国家(NII)やアル・キヤダ・アル・イスラミヤが母体。イスラム、キリスト教、ユダヤ教の教義を融合し、イスラムの六信五行を義務付けていない。イスラム学者会議(MUI)は2007年、キヤダを「異端教団」と認定、宗教冒とく罪でムシャデック師に禁錮4年を言い渡した。

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