これがテロか 「もう現場に戻れない」 銃を持つ男を目撃
続く爆発と銃撃戦。東京で言えば、銀座4丁目にあたるジャカルタの中心部で、まさかこんなテロ事件が起きるとは。発生時、その現場のビルに、たまたま居合わせた本紙記者がその状況を振り返る。
出社前の午前10時半ごろ、スカイラインビル4階にあるジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)を訪れた。日本の本を借りようと思っていた。クラブ内のソファーに座っていたとき、「ボン」という爆発音が外から聞こえた。何事?と思いながら、JJC職員らと窓際に行くと、サリナ前交差点の中央にある警察官詰め所付近から白煙が上がり、その前に5人ほどの人間が倒れているのが見えた。すると、さらにボン、ボンと爆発音が響いた。10時45分ぐらいだった。
何が起きているのか。JJCを出て、1階から外に出ると、隣のコーヒー店「スターバックス」の前に人だかりができている。店の通り沿いのガラスは粉々に割れていて、血まみれの白人の男性が倒れていた。
これがテロか。私は12月にジャカルタに来て、記者歴は1カ月ほどしかないが、テロであることはわかった。だが、何のテロだろう。いつの間にか、警察官詰め所の方に向かって歩いていた。
詰め所から少しサリナデパート寄りの交差点内で詰め所を見ていると、右手から小銃のようなものを持った男がゆっくり詰め所に向かって歩いてきた。帽子をかぶり、何か、上半身が重そうな印象で、ひょっとしたら、爆弾でも抱えているのかもしれないと思った。
そばにいた人たちも、その銃の男に気づき、突然、悲鳴が上がった。インドネシア語はわからないが、「危ない」「逃げろ」と言っているのだろう。みな一斉にサリナデパートの前から東の方に駆け出した。私も一緒に逃げ、裏通りのモスクに避難した。モスクで一安心し、時計を見ると11時15分だった。この間、警察官は1人も見ることはなかった。
なんで、詰め所の近くに行くようなことをしたのか、自分でもわからない。そのあとは、ひたすら怖くなり、現場に戻ることはできなかった。
(上岡尚樹)