施術直後に女性死亡 米国人医師の過誤か ポンドックインダの カイロプラクティック

 南ジャカルタの高級ショッピングモール、ポンドックインダ・モール1のクリニック「カイロプラクティック・ファースト」で昨年8月、インドネシア人女性アルヤ・シスカさん(32)が施術を受けた後、首の痛みを訴え、搬送先の病院で死亡した。遺族は施術を担当した米国人医師による医療過誤として警視庁に告訴。保健省の調査チームは営業許可未取得など問題があったと指摘している。

 シスカさんは昨年8月5日、首の痛みがあり、ポンドックインダ・モールのカイロプラクティック・ファーストで、米国人医師ランダル・カフェルティ氏のカウンセリングを受診。翌6日に40回分の施術代1700万ルピアを支払った後、午後1時と午後6時半の2回、同氏からカイロプラクティックの施術を受けた。しかし帰宅後、首の激しい痛みを訴え、ポンドックインダ病院に搬送されたが翌7日早朝に死亡した。
 ポンドックインダ病院の報告書によると、シスカさんは首の後ろや肩甲骨から背中にかけて広がる痛み、腕から手のひらにかけての刺すような痛み、嘔吐(おうと)などの症状があり、1時間後には首の骨から左肩にかけてふくらみができ、脈拍がなくなったという。心肺蘇生法を受けたが45分後に死亡した。
 シスカさんはオーストラリアのクイーンズランド工科大学卒業後、ジャカルタで働いており、亡くなる11日後の昨年8月18日にはMBA取得のためパリに留学する予定だったという。地元メディアの取材に対し、父親のアルフィアン・ヘルミー国営電力会社PLN前副社長は「(娘は)首の後ろの筋肉がときどき痛むことがあった」と話し、留学前に体調を整えようとクリニックを受診したという。
 シスカさんの家族は死亡1週間後に医療過誤だとして警視庁に告訴。その後、保健省が設置した調査チームも捜査に協力し、クリニックの運営体制や許認可などについて調べてきた。
 警視庁は11月と12月に2回、カフェルティ氏に出頭を命じたが、現在まで行方が分からなくなっている。国外逃亡が疑われる場合には、国際刑事警察機構(インターポール)に国際手配を要請する考え。これまでに司法解剖は行われておらず、詳しい死因は分かっていない。遺族の弁護士は8日、記者会見を開き「(遺族と)捜査官との間で司法解剖についてやりとりはしていない」と話している。

無許可で営業
 ジャカルタ特別州保健局のクスメディ・プリハルト局長は7日、地元メディアの取材に同院が営業許可を取っていなかったことを明らかにした。カイロプラクティックは「伝統療法」に分類され、営業には保健局の許可が必要だが、許可なく違法に営業していたという。
 また外国人は保健省への登録が必要だが、クスメディ局長によると医療過誤の責任が問われているカフェルティ氏は「健康従事者」に登録されていなかった。米カリフォルニア州のカイロプラクターのウェブサイトによると、カフェルティ氏は専門外の診療などが原因で2013年3月3日に資格をはく奪されている。
 「カイロプラクティック・ファースト」はシンガポールやマレーシアでも展開するチェーン店。インドネシアではポンドックインダ・モールのほか、グランド・インドネシアなどジャカルタ特別州内のショッピングモールに7店舗を構える。クスメディ局長によると全店舗が無許可で営業していたといい、7日に警察が全店舗を閉鎖した。(木村綾)

◇ カイロプラクティック 1895年に米国で始まった手技療法。施術法は施術者によって異なり、背骨などの身体部位の調整によりゆがみや痛みを軽減する。世界保健機関(WHO)は補完代替医療と位置づけており、米国、英国などでは資格が法制化されている。日本ではマッサージや指圧、整体などとともに医業類似行為とされ法規制の対象外となっている。海外で施術を受ける場合、医師の指示によるものは海外旅行保険金の支払いの対象になる場合がある。

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