もう一つのクリスマス バタックの教団 26日に礼拝
クリスマス翌日の26日。中央ジャカルタ・メンテンで60年の歴史を持つプロテスタント・バタック・キリスト教会(HKBP)メンテン教会前は人だかり。北スマトラ出身のバタック人のもう一つのクリスマスといわれる「ナタル・クルアルガ(家族のクリスマス)」をのぞいた。
24、25の両日は計6回のクリスマス礼拝があり、約千人が訪れた。
26日午後6時。それまで教会のテント内で紅茶と甘菓子を楽しんでいた来場者に、礼拝堂から司会の歌声が響いた。ナタル・クルアルガのはじまりだ。
全員が着席すると、聖書の朗読を挟んで赤と青の衣装の子どもたちが聖歌を披露。その後も朗読と男声聖歌隊らの合唱が繰り返され、最後に赤い伝統衣装クバヤをまとった女声聖歌隊が、キリスト誕生の物語を歌劇で上演した。
1曲目の歌を終えると、聖母マリアと3人の天使が登場。ナレーターが物語を読み進める。ピアノ、オルガン、バイオリンなどの生演奏とともに2曲目が歌われ、マリア役がキリストを受胎する場面へ。曲を挟んだ次の瞬間、照明が青緑色に瞬き、キリストが誕生する。普段の礼拝とはうって変わって、映画の一場面のような熱演に会場から拍手が湧き起こった。
伝道師のホットマン・シアハアンさん(65)は長年、同HKBPで牧師の育成にあたっている。北スマトラ州バリギの出身。18世紀から続くシアハアンのマルガ(男性親族集団)で自身を含めた9人姉弟が14代目。5年前から「礼拝者が少なくなった」ためナタル・クルアルガを開催。「問題は若者の参加人数が減っていること。以前は親が連れてきたが、世代が変わりその伝統も少しずつ変わっている」
北スマトラ州北タパヌリ県タルトゥン出身で中央ジャカルタに住むヒプヤス・ゴルギアス・シトンプルさん(56)は息子(18)がデートのため1人で参加した。「家族で楽しみたかった」と肩を落とした。
企画はメンテン教会独自のもので、他のHKBPで行われているわけではない。ホットマンさんは「家族間の交流が最大の目的。きょうはバタック人だけだが、信仰したい人はいつでも歓迎します」と語った。劇や歌を中心に若者にラブコールを送り続けている。(中島昭浩、写真も)