二つの宗教、互いに尊重 ムハンマド生誕祭とクリスマス祝う
ムハンマド生誕祭の24日とクリスマスの25日、全国各地でムスリムとキリスト教徒がそれぞれ祝った。ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は互いに尊重し、宗教を越えたゴトンロヨン(相互扶助)の精神が大切だと呼びかけた。国家警察はテロを警戒して警備を強化したが、大きな混乱はなかった。
預言者ムハンマドの誕生を祝う生誕祭は、1年を354日とするイスラム暦(ヒジュラ暦)に基づき毎年日付が異なり、クリスマス・イブを同時に祝うのはことしが初めて。クリスマスにあたる25日は金曜日で、教会での礼拝とモスクでの金曜礼拝も重なった。
ジョコウィ大統領はムハンマド生誕祭に際し、「インドネシアではムスリムが大半だが、調和とゴトンロヨンの精神に基づいた生活を心がけている」と宗教を越えた協調を強調した。大統領は24日、ユフス・カラ副大統領らとともに大統領宮殿(イスタナ)でムハンマド生誕祭を祝福。25日には自身のツイッターでキリスト教徒に向け「メリークリスマス。喜びと平和がもたらされますように」とツイートした。28日には東ヌサトゥンガラ州ティモール島クパンでクリスマスを祝う行事に出席する予定。
プロテスタントのアホック・ジャカルタ特別州知事は24日夜、中央ジャカルタのカテドラル(大聖堂)とインマヌエル教会を訪れ、礼拝に参加した。
インマヌエル教会で知事は、同日ムハンマド生誕祭が祝われたことについて「お互いに尊重し合い、宗教を越えて調和し、安全で穏やかな時となることを望む」と話した。
国内最大のイスラム団体ナフダトゥール・ウラマ(NU)のサイド・アキル・シロジ議長は23日、「ムハンマドの1437年の生誕おめでとう、そしてクリスマスおめでとう」と二つの宗教行事を祝った。
24日朝、中央ジャカルタのイスティクラル・モスクで行われた集団礼拝にはカラ副大統領ら約2万5千人のムスリムが参加。一方イスティクラルの向かいにあるカテドラルでは、24日夜から25日にかけて計8回、クリスマスミサが行われ、訪れた家族連れなどで通りまで人があふれた。ミサに参加したアルウィンさん(54)は「平和や家族を大切に思う気持ちを大勢の人とともに祈ることで、つながりを感じられる」と話した。
イスティクラルでは、クリスマス礼拝のためカテドラルに訪れる人々に駐車場を提供するなど、互いの宗教を尊重し合う光景が見られた。
国家警察はクリスマスや新年に向けて、全国の教会などに8万人以上の警察官を配備、国軍も兵士を動員した。各地の教会で金属探知機を設置し、手荷物を検査するなど警備を強化した。(木村綾、毛利春香)