野生動物 どう共存 ゾウが村襲撃、学校休校も 開発で人との衝突急増
アチェ州ブヌル・ムリア県のピントゥ・リム・ガヨ郡にあるリンバ・ラヤ村で、絶滅危惧種のスマトラゾウが民家や農園などを荒らしている。同地では森の生息地を奪われエサを求める野生のゾウの侵入が相次ぎ、住民約150人が村へ戻れず、モスクや郡役場に集まったり、親せき宅に身を寄せたりするなど避難生活を送っている。
リンバ・ラヤ村ではここ数カ月、少なくとも30頭が侵入しており、村民にとって緊張の日々が続いている。住民によると10月27日夜、寝静まったころにゾウが侵入。その日から頻繁に出没するようになり、これまでに民家10棟や庭、バナナ農園など計10ヘクタールが破壊された。
4日朝には、森へ一度戻った2頭が再び村に出現。住民21人と警察官2人、兵士2人で森へ返した。
村の学校では、付近にゾウの足跡やなぎ倒された木が見つかり、子どもたちの身の安全を守るため、約1週間以上休校にしている。転校する児童生徒が出てきた一方、20キロ離れた別の学校へオートバイで通学させるには燃料費がかさむため、転校できずおびえている子どももいるという。
ピントゥ・リム・ガヨ郡では2012年からゾウが現れるようになり、14年に2人、ことしは1人が襲われ死亡した。村では昨年末、ゾウが侵入しないよう周辺に堀を造ったが、効果は上がっていない。
インドネシア環境フォーラム(ワルヒ)アチェ支部の調査によると、プランテーションや工場、道路開発などによる森林破壊が進み、ゾウと人の衝突はここ10年で急増。14年から15年10月までには28件発生しており、ゾウ28頭が命を落とし、4人が死亡、8人がけがを負っている。(毛利春香)
米生まれのサイ「里帰り」 多くの見物客、繁殖期待 ランプン州
かつて米国に贈られたスマトラサイのつがいの間にできた子どもがスマトラ島の国立公園に「里帰り」し、地元で話題となっている。スマトラサイは絶滅危惧種で、今後は地元での繁殖に役立つのではと期待されている。
ランプン州ランプン県のワイ・カンバス国立公園にやってきたのは、8歳の雄「ハラパン」。インドネシア語で「希望」の意の名前がつけられたこのスマトラサイは、1991年にインドネシア・サイ財団により米国オハイオ州シンシナティ動物園に贈られた2頭の間に生まれた。
ハラパンは米国の同動物園からワイ・カンバス国立公園までの長距離約1万6千キロを、陸、海、空の経路をつないで先月、無事到着。公園事務所で1日から一般公開され、一目見ようと地元見物客でにぎわっている。
スマトラサイの生息数は国内で100頭ほどと言われている。関係者は「ハラパンが早く雌のパートナーを見つけ子どもをつくってほしい」と期待している。 (山本康行)