サッカー界改革へ 制裁解除に向け始動 FIFAと特別委設置
国際サッカー連盟(FIFA)とアジアサッカー連盟(AFC)はインドネシア・サッカー協会(PSSI)と協力して、インドネシアサッカー界の改革を目的にした「特別委員会」の設置を決めた。不透明な協会・リーグ運営、八百長試合、選手の給料未払いなど山積する問題の解決と、FIFAによるPSSIの国際大会出場停止処分の解除に向けて始動する。
PSSIは3日、公式サイトで「FIFAとAFCが国内サッカー界改革のために特別委員会を設置し、PSSIもこれに協力していくことで合意した」と発表。特別委はFIFAとPSSIが指名するFIFA、インドネシア・スーパー・リーグ(ISL)、政府の各関係者、監督、審判ら9人で構成される。FIFA規則に沿ったリーグ運営を目指すことを主眼に早期の委員会設置と、2月に開催されるFIFA臨時総会で取り組み内容を報告することを目指す。
また同日、対立で二つに分裂していた国内の選手会、インドネシア・プロサッカー選手会(APPI)とインドネシア・ナショナル・サッカー選手会(APSNI)が統合することを発表。今後はAPPIを唯一の選手協会として、FIFAも承認する方向だ。
FIFAとAFCは2〜3日、田嶋幸三FIFA理事を中心とした訪問団をインドネシアに派遣。FIFAは、リーグ運営の健全性と独立性に問題があるとして、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領やPSSI幹部と協議、大統領も特別委設置に合意した。
国内のプロサッカーリーグは、協会幹部の内紛を引き金に2011年に二つに分裂。協会も分裂したため、2リーグ2協会が並立するなど混迷を極めていた。同年には財閥バクリーグループの支援を受けた東ジャワ州マランのアレマ・マランが買収行為で八百長試合をしていると報じられると、PSSIのヌルディン・ハリッド会長(ゴルカル党幹部)が更迭される事態に発展した。
FIFAは、不透明な協会運営やリーグ運営に対して再三是正勧告を出し、リーグの統一を要求。その後、13年には協会の統合、14年にはリーグの統合が図られ、協会はPSSI、リーグはISLという現在の形に落ち着いた。
しかし4月にPSSIが、ISLの2クラブの参加資格をめぐって青年スポーツ省の外郭団体インドネシア・プロスポーツ団体(BOPI)と対立。BOPIは同一オーナーが所有していることなどを理由に両クラブをリーグに参加させないよう求めたが、PSSIは要求を無視したため、イマム青年スポーツ相がPSSIの活動を凍結する大臣令を発令。ISLと2部リーグの全試合が中止される事態になった。FIFAはこれをFIFA規定で禁止する政府によるリーグ運営への介入にあたるとして、代表チームの国際大会出場を停止する処分を6月に下していた。
政府は、現在も選手への給料未払い問題が常態化しており、それにより八百長試合に手を貸す選手も少なくなく、活動凍結の大臣令は健全なリーグ運営を促すために妥当だと主張。今回の訪問団にも活動凍結に至った経緯を説明した。
リーグ戦は4月以来行われておらず、選手には生活がかかった喫緊の問題。さらに国際試合の禁止により、代表チームの最新のFIFA世界ランキングは過去最低の171位に転落。サッカー界は改革と問題解決が急務となっている。
訪問団の1人の田嶋FIFA理事は、AFC理事と日本サッカー協会副会長も兼務している。14年1月にはJリーグがISLを運営しているリーガ・インドネシアとパートナーシップ協定を締結し、リーグ運営に関する助言や協力、選手の情報共有などで協力関係を築いており、アジア有数の健全運営と高く評価されているJリーグのノウハウが生かされることも期待される。(藤本迅)