ヤシ殼が良質な炭に バリで日本の職人が実演
世界各地で日本の炭焼きを紹介する「炭やきの会」の山本剛さん(73)がバリ島西部ジョンブラナ県プンゲラゴン村を訪れ、ヤシ殼を炭にする作業を村人たちに披露した。インドネシアで簡単に手に入るヤシ殼をドラム缶で焼くだけという超お手軽な方法ながら、できた炭は高品質。コーヒー栽培が中心のプンゲラゴン村だけに、炭火焙煎(ばいせん)など、村おこしに役立てる方法を今後さぐる。
同村は慶応大学の学生が10年ほど前からホームステイを続けていて、同大学名誉教授でインドネシア研究者の倉沢愛子さん(69)が、インドネシアで炭焼き指導をしたことのある山本さんに声をかけ、先月に実現した。「炭やき会」で日本式の炭焼きを学び、西カリマンタンとジョクジャカルタで炭焼きプロジェクトを立ち上げたインドネシア人のジョニー・ウタマさんも村に駆けつけた。
ホームステイ中の学生や村人が協力して、火を入れたドラム缶にヤシ殼を次々放り込む。一晩寝かせた翌日には炭ができあがった。ジョニーさんが測定器で良質な炭であることを確認すると、歓声が上がった。
指導に当たった山本さんは静岡県の南伊豆で農業を営みながら竹炭を焼いている。
山本さんは、炭は燃料としてだけでなく、農地に混ぜれば土壌が改善され、水や空気の清浄効果もあり、お腹をこわしたときになめれば下痢止めにもなると説明した。また、ジョニーさんと一緒に、同村で収穫したコーヒー豆を炭火で丹念に焙煎する方法も実演。漂うコーヒーの香りに学生も村人も魅了されていた。
慶応大から参加した中山凌さん(21)=商学部2年=は「炭が肥料になり、水も浄化するとは。ごみになるヤシ殼で炭を作って商売になれば村の活性化にもつながるのでは」と感想を話した。
山本さんは「ヤシ殼の炭はとても高品質。これをきっかけにバリに多い竹やいろいろな素材で炭を作ると発見がある。また、土壌改良にも炭は大きな効果があり、農業全般に役立ててほしい」と話している。(田嶌徳弘)