「絶滅寸前」種も野放し 首都で鳥密売横行 カンムリシロムク バリで捕獲 12万円
ジャカルタで希少種の鳥の違法売買が横行している。国際自然保護連合(IUCN)が絶滅の危機があると定めるレッドリストに入っている種類も野放し状態で流通。国際NGOはインドネシア政府に対策を急ぐよう促している。
東ジャカルタ・プラムカ市場は首都一の規模の鳥市場だ。さまざまな色や形、大きさの鳥が入ったかごがずらっと並び、えさなど関連の店も合わせると100軒近くある。鳥はペットとして需要があり、市場では子どもから大人まで多くの人が品定めする。
店の一つで珍しい鳥を見たいと頼むと、店主が路地奥の自宅からバティック柄の布が被さった直方体の箱を持ってきた。「素人でも、まず間違えない」。そう言いながらめくられた布の中には体長約20センチの鳥が2羽並んでかごに入っていた。
くちばしから目の回りにかけて、鮮やかなコバルトブルーの肌が露出している。体毛は積もりたての雪のように白く、尾や羽の先端は真っ黒。見ための美しさから乱獲の対象となってきたバリ固有種の「バリ・ミナ(日本名・カンムリシロムク)」だ。
カンムリシロムクは1900年代に入ってから発見された。元々生息域は狭く、個体数が少なかったこともあり、今ではIUCNのレッドリストで「絶滅寸前」に指定されている。
その希少種が2羽で1500万ルピア(約12万円)。バリ島で捕獲されたものを仕入れたという。別の店では「絶滅寸前」のジャラク・プティ(日本名・ソデグロムクドリ)を1羽200万ルピアで販売していた。
インドネシア在来種の鳥のうちレッドリストに入っているのは131種で、ブラジルに次ぐ世界2番目の数だ。プラムカ市場では絶滅の危険度に関係なく、スマトラからマルク、パプアまで全土で捕獲された固有種が販売されている。
野生生物取引を監視する非政府組織(NGO)「トラフィック」はこのほど、ジャカルタの三つの伝統市場で販売されている鳥の種類や数を調査し、IUCNのレッドリストに入っている種を8種確認した。調査したのはプラムカ市場のほかジャティヌガラ市場(東ジャカルタ)とバリト市場(南ジャカルタ)。販売されていた鳥は206種1万9千羽で、うちプラムカ市場が1万6千羽だった。 インドネシアでは野生の鳥を捕獲することも販売することも禁止されている。繁殖のための捕獲と、繁殖させた個体の取引は条件付きで認められているが、市場で売られているほとんどの鳥が違法に取引されているものだという。
3市場で確認した鳥のうち、22種が国内法で捕獲や取引が完全に禁止されている種だった。カンムリシロムクは16羽、ソデグロムクドリが14羽確認された。そのほか「絶滅危惧」のチャビタイガビチョウが3羽、「危急」のブンチョウが345羽、スマトラガビチョウが76羽、ショウジョウインコが22羽、キガシラヒヨドリが9羽、ジャワバンケンが1羽確認された。
トラフィックはインドネシアは密猟や密売を規制する法律は十分であると評価しつつも、市場では堂々と販売されている状況を挙げ、「野生の鳥の個体数減少の脅威を排除する包括的な規制とその実効性が必要」として政府に対策を求めている。(堀之内健史、写真も)