公営住宅で新生活 カンプンプロ 住民に支援物資
東ジャカルタ区カンプンプロで違法家屋の取り壊しが進み、対象となった住民が徒歩15分ほどの同区西ジャティヌガラにある公営住宅(ルマススン)に次々と入居している。16階建てタワー2棟で全518部屋。25日午後、公営住宅では子どもたちが遊び、夫人たちの井戸端会議の声が聞こえてきた。新たな生活を送る人々を追った。
30平方メートルの2LDK。エアコンは備え付けられていない。3階にあるトゥティ・ジャヤティさん(63)一家4人が住む部屋には、ベランダから心地よい風が入り込んでくる。入居して3日が経つ。トゥティさんは「洪水の心配は必要なくなった。以前の家より狭くなったが、快適に過ごせている」と満足げな表情を浮かべた。
チリウン川流域の住宅密集地カンプンプロ。トティさんは第2隣組(RW)に長年住んでいた。自宅は州政府の取り壊し地域の対象になった。家財はすべて娘夫婦が運んできたという。
「公営住宅には3カ月は無料で住める。その後は払えるかわからない」と、家賃の話になると不安そうに話す。家賃は1カ月30万ルピアだが、無職で収入がないトティさん。娘、ウスナさん(46)の夫、タルディムさん(48)が公営住宅から徒歩で通えるパサールジャティヌガラで働き、生活を支えている。
この日は、公営住宅の玄関付近に、新生活を支えるための物資が届いた。ボランティア団体「レラワン・メラ・プティ」がコメや調味料など生活必需品(スンバコ)を袋詰めにして配布、住民の無料検診を実施した。警視庁はスンバコや即席麺の箱詰めを各世帯に配り、ジャカルタ特別州政府は移動図書館を開設した。2階には、カンプンプロで屋台を経営していた人のために、食品棚が運び込まれた。
支援物資を手に入れ一息ついていたラニ・ウクラインさん(72)。10階で孫3人と4人暮らしだ。ラニさんによると、これまでカンプンプロの第2隣組に住み、土地・建物税を払い続けてきた。「生まれてからずっと生活してきた場所を離れるのはつらい。でも今回は州の取り決め。従わなければ」と語る。住民登録証(KTP)はカンプンプロから西ジャティヌガラに変更するという。
ラニさんの知り合いは8階と12階、13階に住んでいる。エレベーターは毎回定員オーバーで、待ち時間も長い。携帯を持っていないラニさんは「いつも顔を会わせていた近所の奥さんたちと距離が遠くなったような気持ち」と話した。
公営住宅にはほとんどの住民が入居済みだが、取り壊しに対する保証金を求めて、取り壊された後の更地で生活をしている住民もわずかながら残っている。(山本康行、写真も)