荘厳さと陽気さと 下町の結婚式

 朝は沈黙の中、二人はアラーに愛を誓う。昼と夜はにぎやかに大人も子どもも歌って踊る。荘厳でありながら陽気なジャカルタ土着民族ブタウィの人たちの結婚式に出席した。
 土曜日の午前9時、中央ジャカルタ・プラザインドネシア裏の下町クボンカチャン。普段は子どもが裸足でサッカーに興じる路地が一変する。新婦宅の前に建てた純白にピンクで装飾したテントが式場だ。新婦の親族や友人など百人近くが静かに見守る中、白に金で装飾した花嫁衣装を着た新婦のアーリアさん(24)と新郎のハユさん(25)が結婚証明書に署名し、夫婦となった。
 続いて、新郎の親族数十人が会場に到着。長さ1メートルほどのワニの形をしたパンが二つ担がれてきた。これを渡すのがブタウィのしきたりらしい。他にも新郎側は果物や化粧品、ハイヒールなどを新婦の一族に贈った。
 終始表情が堅い新郎新婦だったが、出席者との写真撮影ではほほを緩ませた。会社員の2人はしばらく新婦の家族と同居する。「お金が貯まったら引っ越して、子どもも欲しい」。
 昼食後は式会場横に設置した5メートル四方ほどの特設舞台でインドネシアの大衆音楽ダンドゥットの公演が始まり、お祭りムードに。女性歌手4人が入れ替わり歌う。曲をリクエストしたり、舞台で一緒に歌ったり踊ったりした人が歌手に紙幣を渡していった。
 演奏は延々と続き、日が暮れると上方の電飾が回り始め、辺りを妖しく照らす。歌手が衣装を明るい色のドレスに替えたら、盛り上がりは最高潮だ。テンポの良い曲では「君もこっちで踊れよ」と舞台下でダンスパーティが始まった。10代半ばの少女がしっとりとした曲を歌い上げたかと思えば、姉さん格の歌手が激しいダンスで、一同を釘付けにする。公演は深夜まで続いた。
 新婦の父ウバイさん(57)は「大成功」と満足気。どんちゃん騒ぎに加わらず、最後までじっと遠くから眺めていた。(堀之内健史、写真も)

社会 の最新記事

関連記事

本日の紙面

JJC

人気連載

天皇皇后両陛下インドネシアご訪問NEW

ぶらり  インドネシアNEW

有料版PDFNEW

「探訪」

トップ インタビュー

モナスにそよぐ風

今日は心の日曜日

インドネシア人記者の目

HALO-HALOフィリピン

別刷り特集

忘れ得ぬ人々

スナン・スナン

お知らせ

JJC理事会

修郎先生の事件簿

これで納得税務相談

不思議インドネシア

おすすめ観光情報

為替経済Weekly