多宗教の共存を確認 内相ら現地で沈静化 パプア礼拝襲撃事件
レバラン初日の17日朝、パプア州トリカラ県カルバガの集団礼拝をキリスト教徒の地元住民が襲撃、暴動に発展した事件で、政府は宗教間の対立に発展しないよう沈静化を図っている。閣僚や警察幹部らが現地入りし、地元の宗教関係者や警察、自治体幹部らと協議、多宗教の共存をあらためて確認した。
チャフヨ・クモロ内相は20日、パプア州州都ジャヤプラを訪れ、州知事や宗教関係者らと会談し、焼失した礼拝所や住居、屋台などは政府が再建すると発表した。21日には事件現場のトリカラ県カルバガを訪問し、住民らと面会する予定。
ルクマン・ハキム宗教相は「信教の自由は憲法で保障されている」と述べ、いかなる個人・団体も礼拝を規制することは許されないと強調した。国家人権委員会も「事件は人権侵害にあたる」との見解を示し、同県に移住した少数派のムスリムを保護すべきだと訴えた。コフィファ社会相は住居を焼失し、陸軍施設に収容されている住民153人を支援すると発表した。
カルバガはトリカラ県(人口約15万人)の県都で、パプア州中央に連なる山岳地帯にある小都市。先月開かれた県発足13周年式典には、今回の襲撃事件にかかわったとみられる地元のキリスト教団体、インドネシア福音教会(GIDI)代表が出席し、地元の開発振興を呼びかける講話をしていた。
■礼拝規制の文書
現地を視察したバドロディン・ハイティ国家警察長官は同日、襲撃や暴動に関与した者には法的措置を講じるとの方針を示した。
警察の調べによると、GIDIは15〜20日、国内外から約2千人が集まる集会を開催するため、11日に県警へムスリムの礼拝を規制するよう求める文書を送付。レバラン初日の屋外の集団礼拝や拡声器の使用禁止を訴えていた。
県警はジャカルタ滞在中の県知事にこの文書を送り、県知事がGIDIの集会の実行委員会に説明を求めたところ、実行委は文書内容を変更し県警に報告すると約束したが、事件が発生するまで連絡はなかったという。
事件当時の状況についてバドロディン長官は、集団礼拝を襲撃した住民は爆発物を投げ付けるなど暴徒化したため、警察は威嚇射撃をした後、退散させるために発砲したと説明。被弾した住民一人のほか、暴徒鎮圧にあたった機動隊員一人も死亡したと明らかにした。県警は20日までに教会幹部や襲撃されたムスリムら計22人から事情を聴いている。
治安当局は暴動を阻止できなかったとの批判に対し、スティヨソ国家情報庁(BIN)長官は、11日の文書が出た段階で国軍と警察は警戒し、レバラン当日は礼拝所周辺を厳重警備していたと強調。住民が問題視したのは礼拝で使われた拡声器で、暴徒の怒りの矛先は礼拝所ではなく、ムスリムが所有する屋台に向けられ、礼拝所はあくまで火を付けられた屋台から延焼したと説明した。(配島克彦)