ルマンの夜は更けて 竹筒ご飯づくりに密着 ジャカルタ唯一の工場
下町の一角。深夜、暗闇の中で炎が光る。パチパチと竹が焦げる音とともにスピーカーからダンドゥットの陽気な音楽が聞こえてきた。中央ジャカルタ・スネンのクラマットスネンにある、西スマトラ州パダンの伝統料理「ルマン」の工場を訪ねたのは2日午前4時ごろ。ジャカルタ特別州内唯一のルマン工場で、丹精込めて作る人びとに密着した。
ルマンはバナナの葉を内側に入れた竹筒で炊くご飯のこと。毎日午前2時ごろ、あらかじめココナツの果汁と水分を含ませたもち米を長さ30センチほどの竹筒に詰めるところから始まる。もち米約830グラムを竹筒に入れ、底をトントンと地面に打ち付けて満杯にする。これを4時間がかりで炊き上げる。
工場オーナーのミスダさん(40)によると、ルマンは、ブカ・プアサ(1日の断食明け)の食事としてなじみがある食べ物。小豆を甘く煮たソース「タペ」や焼いたドリアン、ルンダン(牛肉ココナツミルク煮込み)などと一緒に食べる。平日は1日平均100本、ラマダン(断食月)中は600本作る。取引価格は1本1万5千ルピアだ。
従業員は男性のみ9人。午前5時ごろ、額や腕から吹き出る汗をぬぐいながら、もち米の炊き上がりをうかがう。ふっくらとしたもち米が竹筒から顔を出したら、わらで先端を結ぶ。午前5時半過ぎ、半面が黒く焦げた竹筒を、水に浸した軍手を使って次々とひっくり返す。1回目の調理が終わったのは午前6時半ごろ。もうとっくに夜が明けていた。だが続いて2回目の作業に入り、終わるのは午前10時ごろ。相当な重労働になる。
ルマンを作り続けて20年になるミスダさんは疲れも見せず、「作業が終わったら、たっぷり寝て次の夜に備える。そんな毎日です」と笑みを浮かべた。(山本康行、写真も)