現金で難民追い返し 豪海軍に疑惑  新たな外交問題発展も

 オーストラリア海軍が難民を乗せた密航船の乗組員に現金を渡して、インドネシア領海に追い返した疑いが浮上している。疑惑に関して両国政府高官などによる応酬が続いており、死刑問題に続く新たな外交問題に発展する可能性もある。

 東ヌサトゥンガラ州ロテ島の地元警察は5月末、スリランカ人とバングラデシュ人、ミャンマー人の難民計65人を乗せた密航船を拿捕(だほ)した。警察の調べによると、ニュージーランドに向かっていた密航船を、オーストラリア沖で豪海軍が拿捕。そこで乗組員1人5千ドル、船長6千ドルの計3万1千ドルを受け取る代わりにインドネシア領海に戻る取引をしたという。
 報告を受け、インドネシア外務省は豪政府に事実確認を要請、19日にビショップ豪外相からレトノ外相に返答があったが、現金の受け渡しに対する明確な回答はなかっという。
 カラ副大統領は事実確認が先とした上で、事実であれば「密航業者にお金を払うのは賄賂の一形態だ。国家関係の倫理規定に反する」と非難した。
 アボット首相は豪メディアの取材に現金提供について否定も肯定もせずに「本当に言えるのは、我々は(オーストラリアに入国する)ボートを阻止したということだ」と述べた。
 ビショップ外相は「インドネシアにとって最良の方法は国境の管理を強化することだ」と指摘。オーストラリアへの密航船の中継地になっているインドネシアの対応改善を促した。
 この発言にインドネシア外務省広報は「問題を本質から逸らそうとしている」と批判。両国政府の応酬を受け、国営アンタラ通信は「すでに2人のオーストラリア人の死刑執行で緊迫していた2国間の関係がさらに悪化するリスクがある」と報じている。
 オーストラリアは船で海を渡る難民の目的地になっており、インドネシアが中継地となっている。アボット政権は難民受け入れを拒否しており、軍を使って出港地へ追い返してきた。国際法に詳しいインドネシア大学(UI)のヒクマハント・ジュアナ教授は、現金提供に関わった人物をオーストラリアが処罰しなければ「国際社会の中で困ることになる」と話した。(堀之内健史)

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