KPK法改正を拒否 大統領 弱体化狙う国会阻止 汚職捜査3機関、協調示す

 汚職撲滅委員会(KPK)が認定した汚職容疑者が予備審理で相次いで無効と判断され、捜査の法的根拠となるKPK法の改正論が国会で高まる中、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)大統領は、改正拒否を表明した。国民向けには「汚職撲滅には現体制で十分」と説明しているが、法改正によりKPK弱体化を狙う国会内の勢力を阻止した側面もある。

 大統領は19日、大統領宮殿で汚職撲滅の関係閣僚会議を開催。カラ副大統領はじめ担当閣僚のほか、ルキKPK委員長代行、バドロディン国家警察長官、プラセティヨ検事総長も出席させた。
 プラクティノ国家官房長官によると、大統領は会議でKPKの強化が必要で法改正は望まないと言明。会合後の発表では、健全な経済成長のために汚職撲滅は一層重要だと前置きし、撲滅に向けた制度整備に関する大統領令(5月発布)で現状の対応は十分との見解を国民に伝えた。
 会議後には、改めて汚職捜査機関のKPKと国家警察、検察庁のトップが共同記者会見を開催。1月以降、互いにトップを犯罪容疑者認定し対立していたKPKと国家警察、検察が協調していく姿勢をアピールした。
 ルキKPK委員長代行によると、大統領は3機関に対して法に準じて任務を遂行し相互協力するよう指示、「特に政府はKPK弱体化を望まない」と強調したという。
■法相と国会合意発端
 ジョコウィ大統領が危機感を抱いたのは、国会運営委員会とヤソナ法務人権相が16日、KPK法改正を2015年の優先審議リストに加えることで合意したためだ。
 口火を切ったのは、与党ナスデム党会派の議員。同法で認められている捜査中の盗聴について、「人権に配慮し、盗聴が許されるのは、裁判所から令状を取得した捜査に限定すべきだ」と主張した。
 ヤソナ法務人権相は、予審で捜査や手続きの非合法性を指摘されたことを理由に「KPK強化のために法改正が不可欠」「喫緊の問題と理解してもらうため、大統領は(15年リストに加えた)改正案を見る必要がある」と発言。既に5カ年(15〜19年)優先審議リストに挙げられている同法改正を繰り上げ審議することで一致していた。
 KPKの摘発を恐れる国会議員の中には、腹心では弱体化を望み法改正を訴える勢力がある。
 また同相は与党第1党の闘争民主党出身だが、ジョコウィ政権の方針にそぐわない言動が多く、批判を受けている。
 16日以降、カラ副大統領が「KPK強化という意味で法改正は必要と考える」と発言するなど、内閣の足並みの乱れが表面化。法改正は時期尚早とする大統領は急いで関係閣僚会議を取り持った格好だ。
■関係諸法改正が優先
 国会とジョコウィ政権の政治的駆け引きとは別に、司法により、ブディ・グナワン国家警察長官候補(現副長官)やプルノモ前会計検査院(BPK)長官の容疑者認定が相次ぎ無効と判断されて以降、KPK法改正の議論が高まっていた。
 背景には、同法を含む刑事関連法の非整合性が指摘されている。
 プルノモ前BPK長官のケースでは、KPK指揮下で動いていた捜査員は警察・検察の退職者で、予審では「現役の公務員でないため、刑事訴訟法に基づきKPKの捜査は非合法」と判断された。
 法曹界や政府からは、▽既に非整合性が指摘されている刑法と刑事訴訟法をまず改正▽続いてこれらの法と矛盾しないようKPK法を改正――が妥当な手順とする意見が多い。
 ルキKPK委員長代行も、職員が不安を抱かずに捜査に専念できるよう、関連3法を整合させる改正が将来は必要だと述べている。(前山つよし) 

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