日本企業の海外展開支援 NPO法人 ASIA(アジア) 壇健太郎理事(32)
日本企業の海外進出を支援するNPO法人ASIA(アジア)の壇健太郎理事(32)。活動を説明するため、巧みにデザインした自作のプレゼン用資料。力のこもったトーク。20代の時にNPO設立に奔走した熱い志があふれる。壇さんに話を聞いた。
福岡大学の法学部生だった時、尊敬する経済学部教授の講義「ベンチャー起業論」や「プロジェクト型インターシップ」を聴き、講師の企業経営者らが、共通して説いた言葉が耳に残った。「何か社会に役立つことが大切だ」。
福岡市でフリーペーパー発行とイベント事業の会社を起こした。学生起業家だ。徐々に業績も上がったが、何か物足りなさを感じていた。
学者や有識者が主催した日中友好交流イベントに、2週間参加したのが転機になる。「中国の学生は朝から夜まで勉学に励み、日本の若者は海外に目を向ける必要があると実感した」。
当時、マスコミは激しい反日運動を伝えていたが、訪れた上海市や江蘇省では平穏、地元学生と交流し見方が変わった。通訳で参加していた中国人留学生とも親友になった。
「留学生の受け入れ体制を充実させたい」。支援団体をつくった。福岡県内での就職も支援した。福岡県で学ぶ留学生数は、東京に次いで多い。にもかかわらず成果が上がらない。独自集計(2013年度)で、九州での留学生就職率は11%と、全国の28%を大きく下回っていると分かった。
なぜ、留学生は就職が難しいのか。日本企業の海外進出の低調さが背景にあると気づいた。早速、次の行動。海外進出をテーマにしたインターンシップ事業「ブレークスルー」を開始。参加企業が留学生を受け入れ、アジア進出と学生採用につながる流れを作った。
協力的な地場企業の社長から、事業を継続発展させるためNPO法人はどうかと助言を受ける。九州企業のアジア市場進出促進や留学生の支援などを目的に、現在のNPO法人「ASIA」を13年に設立。JR九州、西部ガスなどのトップが賛同し、役員に就いた。法人・個人会員数は約70超、参加学生数は約1500人(21大学)の規模になった。
留学生と企業の交流パーティー、会員企業の海外販路開拓と、実績は徐々に現れてきた。自身の中では、さらなる挑戦への意欲が湧き上がる。「海外で、日本企業の展開促進につながる事業に関わりたい」。NPO活動の延長で新天地に挑んだ。
活動拠点にインドネシアを選んだのは、日本での留学生支援活動を通じてインドネシア進出企業を知ったのがきっかけ。日本企業にとって有望市場と捉えるが、「イスラム圏だからと展開を恐れている企業が多い」という。
ハビビ元大統領の呼びかけで集まった元奨学生の組織「ハビビ・プログラム同窓生連合」(IABIE)の会員やインドネシアの大学とも交流を図る。自分なりのソーシャルビジネスが海外でも根付くか、挑戦は続く。(前山つよし、写真も)