王女の正統性に疑問符 スルタン弟ら ジョクジャ王位継承

 古都ジョクジャカルタの王族で、お家騒動が繰り広げられている。発端は、ハメンクブウォノ10世(スルタン=王)が王女プンバユン氏に王位継承者の称号を与えたこと。王子がおらず、5人姉妹の最年長である王女による女子継承の正統性をめぐり、スルタンの弟ら王族の間で異論が出ている。

 ハメンクブウォノ10世は先月30日と5日に出した詔勅で、プンバユン氏に新たな名称マンクブミを付け、王位継承権を持つ王女「プトリ・マーコタ」の称号を与えた。また同時にスルタンの正式名称の一部から、男性君主のみに与えられ、マタラム王国の正統な継承者であることを示す称号「カリファトゥラ」を自ら削除し、王女への王位継承の道を開いた。
 この決定について、10世の弟たちが反発している。王族のユダニングラット氏が地元メディアに語ったところによると、王宮で行われた10世の詔勅発表の場に弟たちは一人も出席せず、ヘマス王妃や王女ら一部の親族しか姿を見せなかったという。
 10世は7日、6人の弟を王宮に呼び出して協議し、来週にも王族会議を開いて説明するとしている。
■マタラム王国の正統性
 ジョクジャカルタのハメンクブウォノ王家は1755年、マタラム王国が興った中部ジャワ州ソロの王家の分家として生まれた。王子のいなかったハメンクブウォノ5世の死去後、5世の弟が王位を継承したことがある。
 インドネシア独立の英雄として、スカルノ、スハルト両政権で閣僚や副大統領を歴任した9世は5人の妻をめとり、15人の息子、7人の娘がいた。現在の10世は第2夫人との間に生まれた長男。10世の弟ハディウィノト氏が最も正統な継承者との意見も根強いが、66歳と高齢のため王位継承問題は未解決のままだった。
 ジョクジャカルタのイスラム指導者、アブドゥル・ムハイミン氏は、オランダ侵略前にジャワを統治したイスラム王国マタラムの王位継承者であることを示す称号がなくなり、正統性が失われたと指摘する。男性指導者のみを認めるイスラムの教えを反映させた称号であり、これを削除しても女系への移行は正統化できないとの見解だ。
 また全国で唯一、特別州の地位を持つジョクジャカルタの首長問題が再燃するとの懸念もある。地方分権化の流れの中で地方首長選挙が導入されたこともあり、政府はジョクジャカルタでも直接選挙を導入する方向で検討を進めたが、特別州法案の議論が過熱した2010年、地元市民も抗議運動を展開。12年にようやく、スルタンによる世襲知事と定めた法案が成立した経緯がある。(配島克彦)

スルタン(王)の新名称
ンガルソ・ダルム・サンペヤン・ダルム・インカン・シヌウン・カンジュン・スルタン・ハムンク・バウォノ・セノパティ・イン・ンガロゴ・ンガブドゥルラフマン・サイディン・ポノトゴモ・カリファトゥラ・インカン・ジュムヌン・カピン・スドソ・イン・ンガヨクヤカルタ・ハディニングラット
(69歳。ジョクジャカルタ特別州知事)

王女プンバユンの新名称
グスティ・カンジュン・ラトゥ・マンクブミ・ハムマユ・ハユニン・バウォノ・ラングン・イン・マタラム
(43歳。10世とヘマス王妃の長女で、5人姉妹の最年長)

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