水道事業、再公営化へ 憲法裁・地裁で判決 訴訟の長期化も

 ジャカルタ特別州で水道事業を再公営化する機運が高まっている。1998年に外資を導入して民営化したが、憲法裁と中央ジャカルタ地裁がこのほど、水資源は公に管理すべきだとする判決を相次いで下したためだ。事業者は控訴する構えを示しており、アホック州知事は法廷闘争の長期化を予想している。 

 中央ジャカルタ地裁は24日、原告側の主張を認め、政府に特別州内の水道事業を公営化するよう命じる判決を下した。民間企業が水道事業を担っている現状を問題視する市民団体が、水道料金が割高に設定されている一方で水道網整備が遅れるなどとして正副大統領や公共事業・国民住宅相、ジャカルタ州知事、民間事業者2社などを訴えていた。
 NGOのキアラは「水道を利用する権利を求めるジャカルタ市民の勝利」として判決を歓迎した。
 先月には憲法裁が水資源管理の民営化を盛り込んだ水資源法(2004年第7号)を違憲とする判断を示した。判決は憲法が国民の水を利用する権利を保障しているとし、民間企業の水道事業参入には一定の制限を設けるべきとした。
 判決を受け、バスキ・マディムルヨノ公共事業相は同法の改正を約束。水資源管理における官民連携のあり方を見直す方針だ。同省のムジアディ水資源総局長代行はインドネシアが世界で5番目の水資源規模を誇るとし、持続可能な管理体制を模索していると説明する。
 ただ、ジャカルタ州内で水道管理を担っている民間企業のパム・リヨネズ・ジャヤ(パリジャ)とアエトラは地裁判決を不服として控訴する構えだ。パリジャのモハンマド・セリム社長は30日、上級審で判決が確定するまでは事業を継続すると発表した。アエトラ幹部も日刊紙コンパスに同様の方針を示している。
 また、アホック州知事は同紙に対し、水道事業が再公営化される公算は高いと語る一方、結論まで10〜12年を要するとの見通しを示した。知事は法廷闘争の長期化を見越し、州営不動産のジャカルタ・プロペルティンド(ジャックプロ)などを通じて独自に水道網を進める方法を模索する考えだ。
 特別州は1998年に水道事業を民営化した。州を東西に二分し、西部をパリジャが、東部をアエトラが管理する25年契約をそれぞれ州営パム・ジャヤとの間で締結した。アエトラの前身は英テムズと国内企業の出資で設立された企業で、シンガポールの企業が株式の95%を取得し、社名を変更した。パリジャは現在も仏スエズ傘下に置かれている。当時のスハルト大統領が強引に民営化を推し進めたとの批判がある。
 ジャカルタ州内の水道網の普及率については09年時点で約63%にとどまるとの調査結果がある。(田村隼哉)

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