子どもにエネルギーもらった 海外に教育の場を求めて SJS岩渕初夫校長

 スラバヤ日本人学校(SJS)で2012年4月から3年間、校長として生徒と学校を見守ってきた岩渕初夫さん(67)が帰国する。「心優しく、いつも元気で、走るのが早い」と生徒や教員、保護者から慕われてきた岩渕さん。14日の卒業式や離任式では涙を浮かべながらSJSとの別れを惜しんだ。      

▼異なる環境で前向きに
 岩渕さんはSJSの歴代校長の中で最年長。大阪府東大阪市内の中学校で37年間、教師を務め60歳で定年退職した。定年後も大阪で学童保育に携わる活動を続けていた。
 1998〜99年にオランダのアムステルダム日本人学校で教頭として勤務した経験があり、「もう一度海外の日本人学校へ」との思いで文部科学省の「在外教育施設シニア派遣教員」に応募し、スラバヤ日本人学校への赴任が決まった。
 岩渕さんは日本人学校に強い魅力を感じるという。「もともと英語科の教師で、外国が大好き。海外に住みながら教育の仕事をするのはやりがいの一つ。日本を離れ、異なる環境でさみしさや苦労もあると思うが、海外で前向きに必死に頑張る子どもたちに応えたい」と話した。
 2012年2月に赴任先が決まり、その2カ月後の4月にスラバヤへ来た。偶然にも同校9代目の校長である川口通男さんは同じ東大阪市内で働く知り合い。「川口さんから事前にスラバヤのことをたくさん聞いていたので不安はありませんでした。実際に来てからも特に不自由はしていない」と笑う。3年間、一度も病気をせず、健康。運動が大好きで、子どもたちともよく一緒に遊んだ。

▼子どもは親を見ている
 SJSの小学部と中学部を合わせた生徒数は60人。「1クラス10人程度で、教員との距離が近く、一人一人にスポットライトが当たる。校内でのびのびと過ごすからか、みんな心がとっても素直。保護者と先生、生徒の関係も良い」。ジャカルタと違いスラバヤに塾などはないが、教員が補習をし、子どもたちも日々こつこつと勉強し、学力をつけている。
 日本人学校では日本の小中学校と比べると生活指導に充てる時間が少ないという。「家庭教育がきちんとしている子が多く、両親そろって海外赴任する場合が多いため、日本に比べると『非行』の問題がほとんどない。教員は授業や学級のために全力投球できる」
 一方で「いい子」を演じなければならない圧力もあるのではないかと話す。「海外へ赴任中の父親は会社の名前を背負っているため、何か悪いことをすれば父親の会社の名に関わるかもしれないと、敏感に感じ取っている。さらに、ここでは日本人社会が狭く、うわさもすぐ広まる。子どもは親の姿をよく見ており、反抗期の時期でもあるが、できるだけ我慢している部分もたくさんあるのだと思う」と指摘する。

▼古い校舎と資金不足
 SJSの校舎は老朽化が進み、昨年5月には水が出なくなった。「校舎を見直すきっかけになり、トイレを増設したり机やイスなどの備品もそろえたりした」。同校の生徒数は少なく、資金不足が大きな課題。現在の生徒一人あたりの1カ月の授業料は350ドル。来年度からは値上げするという。「子どもたちと協力しながら校内ではエアコンをなるべく使わないなど節約している」。子どもたちは弁当が暑い教室で腐ってしまわないよう、涼しい職員室に毎朝持って行く。「スラバヤに日系企業がもっと来てくれたら、生徒も増えるかもしれない」と期待を寄せた。
 今後は奈良で家族とゆっくりと過ごすという。スラバヤでの学校生活が教師として、最後の学校生活となった。「生徒たちはちょうど私の孫の世代で、かわいくて仕方がなかった。子どもたちと一緒に遊び、触れ合うことで、毎日エネルギーをたくさんもらった。3年間、本当に楽しかった」(毛利春香、写真も)              

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