「苦労しがいある国」 ジェトロ・ビジネスセミナー 富吉所長とバクティアル氏講演

 日本貿易振興機構(ジェトロ)ジャカルタ事務所は十六日、中央ジャカルタのマンダリン・オリエンタル・ホテルで同事務所の富吉賢一所長とインドネシア大学のバクティアル教授を招き、「インドネシアビジネスセミナー」を開催した。

 セミナーには日系企業の駐在員ら約百五十人が出席。富吉所長は「インドネシア経済の現状と今後のビジネスの展望」と題して講演した。
 インドネシア経済が順調に成長していることを、豊富な資源や民主化が進み、政治的な安定性を持っているという観点から概説。さらに、現在日系企業の進出動向として、「飲食やIT、金融といったサービス産業、特にBトゥーBの進出が目立つ」と述べ、日系企業の投資先評価が二〇一一年の調査で五位と上位に挙ってきていることを強調した。
 一方で今後のリスク要因として、(1)電力やガスなどのエネルギーインフラの安定供給(2)交通インフラの不足による交通渋滞の深刻化や港湾などにおける貨物の滞留(3)税制や通関などでの法的不確実性の改善―を挙げた。こうしたリスク要因はあるが、富吉所長は「米国や中国に並ぶ潜在力を持ち、親日的であるため、政府の実行力次第で日系企業にとって非常に苦労のしがいがある国」とまとめた。

■ハッタ氏が有力か
 バクティアル教授は「第二期ユドヨノ政権の二年目―政治・社会・文化の動きを中心に」と題し、まずは今年一年のユドヨノ政権が政治面、社会・外交面、人権面の不祥事が政権支持率低下に大きな影響を及ぼしたことを指摘。
 また、来期の大統領選についても分析し、ハッタ・ラジャサ経済担当調整相が他候補よりも若干クリーンなイメージをもっていることなどから有力候補であると説明した。

■超富裕層の制御
 また、現在のインドネシアが直面している問題の原因として、米ノースウエスタン大学のジェフリー・ウィンタース教授の「民主主義が機能していないからではなく、超富裕層の絶大な影響力をコントロールできないことが主な要因」という主旨の論文を引用。
 スハルト政権期が現在よりも良い政治体制であるとの声が出ていることに対し、ウィンタース氏が「インドネシアの民主主義に対する不満は全くの見当違い」と明言していることに同調し、インドネシアの民主主義は極めて高度な基準に従って機能しているが、問題点としてはスハルト政権崩壊後、野放しになった超富裕層に原因があると指摘した。スハルト政権時代は超富裕層の出現を許したが、彼らに政治的な影響力をもつことを許さず、支配していたが「その後、スハルトの子どもたちが超富裕層になり、公平な指示を出せなくなったため、政権の崩壊につながった」と語った。バクティアル教授はこれらを制御するため、今後の課題として、政治的決断の必要性とインドネシアへの司法試験制度の導入が必要と説いた。
 さらにインドネシアの華人に関しても解説。現在、インドネシア社会全般で華人の人たちの立場にも多様性があり、華人としてのアイデンティティーを維持したい人も、そうでない人もいることを理解する必要があるとの見解を示した。

■若年層の保守化
 また、イスラム政党と市民の保守化との関連も説明。年々、イスラム政党の得票率が低下しているが、市民レベルでは宗教意識に対する保守化が起きている矛盾を指摘。民間団体が行った若年層の意識調査では宗教的なアイデンティティーがインドネシア人としてのアイデンティティーを凌駕しており、インドネシアの若年層イスラム教徒の宗教意識が保守化とリベラル化の両方を含む複合的なものであると述べた。
 最後に二〇一四年以降のリスク要因として、(1)変わらぬ腐敗構造(2)紆余曲折の民主化(3)保守化する宗教観―があると語った。


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