仙台で震災の教訓発信 カラ副大統領が演説 国連防災会議開幕
186カ国・地域が参加する第3回国連防災世界会議が14日、仙台市で開幕した。防災の国際会議としては最大規模で、東日本大震災や自然災害の教訓を世界へ発信する。インドネシアからはユスフ・カラ副大統領が開会式に出席したほか、同市内で開かれるシンポジウムやイベントに、アチェ大津波の研究者らが参加した。
現地からの報道によるとカラ副大統領は、14日の開会式で演説し、アチェ大津波の際に日本から多大な支援を受けた謝意を伝えた。06年の中部ジャワ地震や、国内で発生した噴火、洪水などの例を挙げ、日本と同じ自然災害が多いインドネシアとして防災意識の向上、対策を進めることの必要性を強調した。さらに「災害対策はあらゆるレベルで長期的な国際協力を必要としている。技術や知見を共有することが重要だ」と各国の協力を呼びかけた。
18日までの期間中、仙台市では大学など各地でイベントやシンポジウムが開かれている。同市青葉区の勾当台公園市民広場では「国際交流のひろば」が開かれ、世界の料理が楽しめる屋台などが出店。消防車両の展示や、破損した水道管復旧作業の実演も見ことができる。
同広場には、国際協力機構(JICA)がブースを出展し、各国の災害への取り組みを紹介している。14、15の両日、アチェ州シムル島に伝わる津波の教訓を紙芝居にした高藤洋子さん(立教大アジア地域研究所)も参加。14日は日本語、15日はインドネシア語で紙芝居を上演し、同州バンダアチェ市のイリザ・サアドゥディン・ジャマル市長も観賞した。
高藤さんによると、親子でイベントに来た人は「インドネシア語が分からなくても絵でアチェの話が伝わった。(紙芝居で登場する)陸前高田の一本松の絵を見たとき、胸がいっぱいになった」と話した。「地震が来たらまず高台に避難」と子どもと確認していた人もいたという。
高藤さんは15日、仙台市民会館で日イの災害文化交流について講演し、紙芝居の取り組みを紹介した。「防災の教訓を継続して、伝えていくことが大切」と説き、参加者らと意見交換をした。
東北大学災害科学国際研究所(仙台市)は期間中30以上のシンポジウム、イベント、展示などを同大と周辺で実施し、各国から防災関係の研究者らを招いている。14日のシンポジウムでは、シャークアラ大学(アチェ州)からサムスル・リザル学長、同大大学院のムハンマド・ディルハムシャー災害科学プログラム長、津波防災研究センター(TDMRC)のハイルル・ムナディ所長がバンダアチェでの防災教育について講演し、子どもたちに防災の知識を伝えていくことが必要だと訴えた。
またバンダアチェにある津波博物館の館長や、イスラム学者会議(MUI)のディン・シャムスディン議長も仙台を訪れ、世界の防災関係者と交流した。(西村百合恵、4面に関連)